「拉致問題風化に危機感/仙台で舞台劇『めぐみへの誓い』」(『産経新聞』宮城版朝刊 令和4年1月27日)

「宮城でめぐみさんの舞台劇 風化に危機感」(産経ニュース 2022/1/26 17:58 奥原 慎平」

⇒ https://www.sankei.com/article/20220126-VTZEEWJEGFPWFCO5BNMHOYZPZM/

北朝鮮による日本人拉致問題啓発のため、被害者の横田めぐみさん(57)=拉致当時(13)=を題材にした舞台劇「めぐみへの誓い―奪還―」が26日、仙台市内で開かれた。昭和52年11月に横田さんが新潟県の海岸で北朝鮮の工作員に拉致されて今年で45年となるが、救出の道筋は見通せないままだ。拉致問題への関心が宮城県でも薄れつつあり、関係者は危機感を強めている。

「朝鮮語を勉強する理由は…日本へ帰りたいからです。お母さんに会いたい、お父さんにも会いたい」

北朝鮮で18歳になった横田さんを演じる女性が訴えると、当局者役の男性はこう突き放し、思想教育の再徹底を指示した。

「主体(チュチェ)思想を揺るぎないものとして確立するんだ。やらなければ危険思想の持ち主として炭鉱にほうり込むぞ!」

絶望した表情を浮かべた横田さん役の女性はその場にうずくまった-。

公演は政府や県などが主催し、被害者が拉致された経緯や北朝鮮での生活を劇団員が演じるもの。平成26年3月以降、全国計40カ所で実施され、宮城県内の公演は29年以来となる。

拉致問題は太平洋に面した宮城県もひとごとではない。拉致の可能性が排除できない「特定失踪者」約470人には県の出身者や県滞在時に拉致されたとみられる人が計4人いる。「救う会宮城」などは12年以降、政府の背中を後押しするための署名活動を行っている。

「草の根」の取り組みだけではなく、県議会でも昨年12月15日に「拉致問題に対する理解を深めるための取組推進決議」が可決された。

決議をめぐっては学校教育における啓発アニメの活用などを盛り込んだため、共産党会派が「(権力の)学校教育の内容への介入に道を開きかねない」と反発。主導した自民党議員が「拉致の本質は政治問題ではなく、人権問題だ」と訴え、立憲民主党系や社民党の会派の賛同は得られたが、共産党議員は退席した。

拉致被害者5人の帰国につながった平成14年の小泉純一郎元首相の訪朝以降、日朝首脳会談の実現は見通せない状況が続く。県内でも若い世代を中心に拉致問題を知らない人が増えているというが、被害者家族の高齢化は進んでいる。

救う会宮城の安藤哲夫会長は「与野党の国会議員は被害者の塗炭の苦しみを分かっているのか。解決に向けた気概が感じられない」と述べつつ、「被害者全員の即時救出に向け、政府が本腰を入れて取り組むためには世論の圧力しかない。若い世代の人に地道に訴えていく」と語った。(奥原慎平)