【渡辺勝幸ご報告】東北大学大学院における令和3年度講義が終了しました─「情報技術経営論」講義の内容と受講者の感想を公開します! その4(終)【起業家教育】

今年も令和3年4月から8月にかけて、
毎週月曜日に、

私、渡辺勝幸は、東北大学大学院情報科学研究科
https://www.is.tohoku.ac.jp/
において、
非常勤講師として、情報技術経営論の講義をしました。

今年でこの講座を持つのは早いもので8年目となりました。

この講義を受け社会に巣立って行った方々もたくさんいますし、
Facebookなどで引き続きつながってくださっている卒業生の方もおり、
その活躍が楽しみです。

なかには起業した方もいらっしゃいます。

今年の履修者は41名。
今年も履修者のほぼ全員が講義を受けてくれましたが、

新型コロナウイルスの影響により、
オンライン授業と対面+オンラインのハイブリッド併用となり、
昨年はすべてオンラインでしたが、
ZOOMの活用などでグループワークをオンラインで実施したり、
SlackとZoom、Google classroomを利用することにより、
例年に近い形で進めることができました。

私がこの4か月間講義した内容と、
大学院生の受講しての感想を以下の項目で書いていただきましたので、

「起業家教育」をテーマに格闘している私の活動を、
みなさんにシェアしたいと思います。

1、この情報技術経営論を受講しての全体の感想

2、最も印象に残っている講義(第○講と記してください)とその理由

3、この講義を受けて、自分がこれからの人生をいかに生きていくか実践の「置換え」を表明してください。

この講義は、履修者全員に
メールアドレスを登録してもらい、
メーリングリストを作成しました(GoogleGroups)。

このメーリングリストを使って、
講義の週の金曜日までに、

1、講義において気づいたこと【気づき】
2、その気づいたことから自分は何を実践するか【置換え】

を毎週提出していただきました。

東北大学令和3年度シラバス
【情報技術経営論 Management of Information Technology】

 前期(月) 10:30-12:00

科目名/Subject 情報技術経営論
曜日・講時・教室/Day/Period/Place 前期 月曜日 2講時 情報科学研究科中講義室
単位数/Credit(s) 2
対象学科・専攻/Departments 情報基礎科学専攻、システム情報科学専攻、人間社会情報科学専攻、応用情報科学専攻

授業題目/ClassSubject 企業のエッセンスを学ぶ
授業の目的・概要及び達成方法等
起業家学。会社の作り方、ゼロから事業はいかにしてつくられるか、
起業成功のエッセンスを学ぶことにより、ビジネスで成功する極意を習得し、
受講者が修士修了後、社会に出たときに即戦力として活躍できることを目的とする。

初回の講義はリモート講義とする。

授業の目的・概要及び達成方法等(E)
Entrepreneurial Studies.
Students will learn how to build a company and the essence of successful entrepreneurship.
The objective is to prepare students for immediate success.
The first lecture will be a remote lecture.

学修の到達目標/Goal of Study
情報科学を基礎として起業することに理解を深める。

授業内容・方法と進度予定/Contents and progress schedule of the class
下記の内容を講義する。

・起業に必要なものは何か─逆境こそチャンス
・起業戦略と新規事業立案戦略─6W2H
・起業支援政策の形成過程─安倍政権の成長戦略とは
・ビジネスは問題から生まれる─問題把握、現状分析と客観視
・会社の作り方
・実際に事業を「つくる」
・どの会社にも必ず起業家がいる─起業家の歴史
・起業がうまくいくチームは「桃太郎」
・集客、営業の基本─ドラッカーの「顧客の声を聞く」
・値決めは経営─価格はどのようにして決められるのか
・起業とファイナンス
・公益経済と共通価値の実現(ポーターの経営論)
・プレゼンを学ぶ
・起業家ヒアリング(起業支援、家事代行ビジネス、海外進出支援ビジネス、社会起業、パーソナルトレーニング、食とワインと地域貢献、介護事業の未来など)

使用言語 日本語
成績評価方法/Evaluation Method レポートで評価する。

授業時間外学修
履修者には授業に即した課題を行うことが求められる。
授業時間外学修(E)
Students must do the assignments as they are given.
オフィスアワー 授業開始日に説明する。
オフィスアワー(E)
Office hours will be announced on the first day of class.

実務・実践的授業/Practical business
※○は、実務・実践的授業であることを示す。/Note:”○”Indicates the practical business

その他/In addition
オンラインでの質問を積極的にお待ちします。

講義カリキュラムは以下の通りで行いました。

第1講 4月12日 オリエンテーション・起業には何が必要か(動画)
第2講 4月19日 起業戦略と新規事業立案戦略ー6W2H(動画)
第3講 4月26日 起業支援政策の形成過程ー政府の成長戦略とは(動画)
第4講 5月10日 ビジネスは問題から生まれるー問題把握、現状分析と客観視 対面(ハイブリッド)
第5講 5月17日 起業家ゲストスピーカーその1「家事代行サービスの可能性と私の履歴書」株式会社 IDENTITY 野地数正 代表取締役 対面(ハイブリッド)
第6講 5月24日 どの会社にも必ず起業家がいるー起業家の歴史 対面(ハイブリッド)
第7講 5月31日 値決めは経営・ビジネスの基礎、人事管理ー起業がうまくいくチームは『桃太郎』 動画
第8講 6月14日 起業家ゲストスピーカーその2「本業を通した社会課題解決とSDGs実践事例」 株式会社ラポールヘア早瀬渉代表取締役 対面(ハイブリッド)
第9講 6月21日 起業家ゲストスピーカーその3「人・地域・文化・産業をつなぎ、はぐくむワイナリーづくり」 株式会社秋保醸造所毛利親房代表取締役 対面(ハイブリッド)
第10講 6月28日 公益経済と共通価値の実現(ポーターの経営論) 対面(ハイブリッド)
第11講 7月5日 起業家ゲストスピーカーその4「越境する福祉」社会福祉法人ライフの学校田中伸弥理事長 対面(ハイブリッド)
第12講 7月12日 事業計画を『つくる』(ワークショップ) オンライン(ZOOM)
第13講 7月19日 プレゼンを学ぶ・ファイナンスについて(お金の借り時はお金を返せるとき) 対面(ハイブリッド)
第14講 7月26日 起業家ゲストスピーカーその5「日本と世界を繋ぐビジネスクリエーター。中小企業の国際化支援事業」 KM International Trading and Consulting 中正宏代表 対面(ハイブリッド)
第15講 8月2日 【最終講】事業計画発表 オンライン(ZOOM)

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【Zさんの講義の感想】

1、この情報技術経営論を受講しての全体の感想

当初は起業支援をする政治家が起業を語るということでかなり割り引いて見ていたが、
経済政策がどのような力学で経済に影響を及ぼしているかの解説やゲストスピーカーの発表、
そして毎回真面目にアウトプットすることを通じて、
刺激的なだけでなく大変勉強になる講義でした。
どうもありがとうございました。

2、最も印象に残っている講義(第○講と記してください)とその理由

【第9講】

私も純粋な情熱を傾ける対象やずば抜けた才能といったものはないため
技術的な方向性での起業はあまり考えていない。
その意味で、本講義でのスピーカーはビジネスと政治的手段を融合した
老獪な仕事の進め方をされており、大変勉強になった。

3、この講義を受けて、自分がこれからの人生をいかに生きていくか実践の「置換え」を表明してください。

元々事業を通じて社会課題を解決するという情熱を持っていたのだが、
本講義において一部のスピーカーに対し強烈な違和感を覚えたことでピボットした。
確かに、起業によってビジネスのスキームを作ることはビジネス的にも資金的にも極めて難しい。
また、(授業では扱ってないが)ボーダーレスジャパンのような社会起業家集団は極めて高い価値を生んでいるし、
ビジネスであるから持続性や拡張性もある。
しかし、どうしてもマーケットが小さくなりがちなためビジネスの影響が小さく、
また解決策の専門性が低いのである。
私は、たとえ歯車になるとしても、どれだけ貢献しても株主資本主義である以上報われないとしても、
専門性をもとに会社というプラットフォームを通じて価値をスケールさせ、
効率を極める資本主義社会により高い価値をもたらす存在でありたい。

【AAさんの講義の感想】

1、この情報技術経営論を受講しての全体の感想

本講義は、他の講義とは雰囲気が異なり「起業」をテーマに
一貫した目的の元行われた講義であるという印象がありました。
受講前も受講後もその印象は変わらず、
渡辺先生のお話はもちろん、ゲストスピーカーとして数々の起業家の方が実際にお話ししていただいたため、
とても刺激があり学びの大きい講義でした。
また、各回の課題として「気づき」とそれをどう「置き換え」するのかを毎回問われていたため、
復習や自分を見つめなおす機会にもなり、非常に満足度の高い講義でした。
ありがとうございました。

2、最も印象に残っている講義(第○講と記してください)とその理由

【第5講】
私が最も印象に残っている講義は第5講「家事代行サービスの可能性と私の履歴書」
株式会社 IDENTITY 野地数正 代表取締役 です。
数ある講義の中でも、私自身の精神面に大きく影響を与えてくださった講義だからです。
私自身が普段から考えていた“自信”とはなにかについて、
野地さんの実体験も踏まえながら分かりやすくご説明いただき、
吸い込まれるような内容の講義でした。
特に「自信とは他信ではない」が印象的でした。
私は以前から他人の評価によって形成されている部分が多く、
あくまで“自信”は他人ベースとなっていました。
講義を経て私自身考えた結果、“自身”を形成する核が“自信”なのではないかと気づきました。
現在も、自分を1番信じることができるのは他の誰でもなく自分であることを胸に日々生きています。
貴重なお話を聞けました、ありがとうございました。

3、この講義を受けて、自分がこれからの人生をいかに生きていくか実践の「置換え」を表明してください

起業家視点の思考や行動に至った動機など、きっかけは些細なことであり、
興味を実現化する意志の強さを起業家の方達に感じました。
そこで、今後は私自身の興味や欲望に対し、どうしたら実行できるのかを
研究や就活、仕事で意志を持って実践していきたい。

【ABさんの講義の感想】

1、この情報技術経営論を受講しての全体の感想

多くの回で、お話しされていて自分が一番学びになったことは、マインド面でした。
起業をする人は、何か特別な技術を持っているからそれを活かすために起業をするというのが、
この講義を受ける前のイメージでした。
しかし、講義でもお話しされていたように、
日本または世界でどんな社会課題があってそれを自分が解決したいという想いが大切だと感じました。
ゲストスピーカーの方にもそのような精神が宿っているように感じ、
理論的なお話と経験を両方聞けたことはその理解に大きく役立ちました。

2、最も印象に残っている講義(第○講と記してください)とその理由

【第9講】
地方創生の難しさを感じるとともに、粘り強さの大切さを学んだ。
また、課題において、私たちのような学生ならではの視点も有益であると感じた。

3、この講義を受けて、自分がこれからの人生をいかに生きていくか実践の「置換え」を表明してください

自分が起業するかはわからないが、
ビジネスにおいて参考になる必要なマインドはいくつもあったと思う。
特に、あきらめないポジティブさが今後生きていく上で実践したいことである。
営業の話で、200人に1人が受け入れてくれるようなものなので、
断られたら、承認されるまでの数が減ったと思う、という例があった。
そのようなポジティブネスを意識していきたいと思う。

【ACさんの講義の感想】

1、この情報技術経営論を受講しての全体の感想

師の方々の経営者としてのキャリアや理念を聞くことができた貴重な機会だったと思う。
これからのキャリアの中で事業を立ち上げることになったら
自分の利益ではなく事業を社会の課題と結び付けて事業に取り組もうと思う。

2、最も印象に残っている講義(第○講と記してください)とその理由

【第9講】
地産地消にこだわり地元の生産元や流通業者とのつながりをもって
千元のブランドを確立するというスタイルは
地元の食文化を広めることで地方活性にもつながるため非常に有意義であると感じた。

3、この講義を受けて、自分がこれからの人生をいかに生きていくか実践の「置換え」を表明してください

今後必ずしも起業するわけではないにせよ
起業家としての視点を持つことはビジネスの上でとても有利に働くと思った。
社会における課題と自分の仕事、能力をどう関連付けて
課題解決のためにどのような行動を起こせばいいのかという考えを
常に持ってキャリアを積んでいこうと思う。

【ADさんの講義の感想】

1、この情報技術経営論を受講しての全体の感想

「起業」そのものに興味を持ってはいたが、具体的にどうすればいいか、
実現できるのかどうかは分かっていなかった。
しかし、この講義を通して、事業計画書を実際に作成したり、
資金をどうやって用意すれば良いかや、実際に起業した方たち講演を通して、
多くのことを学ぶことができた。
また、自分自身が企業するかどうかはわからないが、
起業家について理解を深めることで、
起業家を助けるということが自分にできる重要なことだと感じた。

2、最も印象に残っている講義(第○講と記してください)とその理由

【第6講】
起業家が起業するまでには、重要な人物との出会いがあり、
その出会いをないがしろにせずに大切にすることで、
のちに大きな成功につながっていたが、ただ、その人の能力が高いだけでなく、
そういった人たちとの出会いそのものも重要な要因だと気付くことができたから。
また、出会いだけでなく、何度困難に立ち向かって失敗をしても、
成功するまでやめないという姿勢が最後には成功につながっている一方で、
誰も成功していない分野にこそ、ビジネスチャンスがあるのだとも気づくこともできたから。

3、この講義を受けて、自分がこれからの人生をいかに生きていくか実践の「置換え」を表明してください

自分がこれから実際に起業することがあるかどうかはわからないが、
起業しようとしてチャレンジしようとしている人をまずは理解して、
助けたり、協力することはできると感じたため、
この講義を通して学んだことをもとにそういった人たちを助けることはまずは実践できることではないかと思った。

【AEさんの講義の感想】

1、この情報技術経営論を受講しての全体の感想

渡辺先生の授業では起業する上で最低限必要となる知識と思考法について学べたと思います.
また,起業家ゲストスピーカーの回では,その人の経歴や思いを聞くことができ,
起業の力の源泉である「情熱」を感じることができました.
授業全体を通して,起業における「車輪」と「エンジン」を学ぶことができたと思います.

2、最も印象に残っている講義(第○講と記してください)とその理由

【第11講】
第11講の田中伸弥様の講義が最も印象に残りました.
人としての尊厳を保たせたまま,どの様な老後体験,老後生活を提供するべきか
と言う問いの目の付け所とその解決方法は非常に興味深かったです.
今後,より少子高齢化が進みゆく日本社会において非常に重要な分野のビジネスであると感じ,
その分野のデファクトスタンダードとなって欲しいと感じるプレゼンテーションでした.

3、この講義を受けて、自分がこれからの人生をいかに生きていくか実践の「置換え」を表明してください

本授業を受けて,人間と社会の関わりの中で自分がどうしたいのか,
どの様に生きたいのかという問題について考えることの必要性を考えさせられました.
そしてその中で,いかにして社会に対して価値あるアウトプットを出すべきか,
悩みながら進んでいきたいと思います.

【AFさんの講義の感想】

1、この情報技術経営論を受講しての全体の感想

実際に企業を経営している人にお話しを聞かせていただくことで
雇用する側にしかない考え方をたくさん知ることができました。
また、将来企業する気は無くても経営者のマインドを知っていることで
企業の課題としていることなどの知見を得ることができました。

2、最も印象に残っている講義(第○講と記してください)とその理由

【第8講】
第8回目の講義ですです。
講義後の課題で社会課題解決を行っている企業を調べた際に
多くの身近な企業が積極的に行っていました。
これからの就活において企業分析の1つになりました。

3、この講義を受けて、自分がこれからの人生をいかに生きていくか実践の「置換え」を表明してください

人生に『働く』ということは必ずしも雇用されることではないと学びました。
就活においても多くの選択肢を広げていきたいと感じました。
ありがとうございました。

【AGさんの講義の感想】

1、この情報技術経営論を受講しての全体の感想

他の講義とは毛色が違っていて、とても面白かった。
大学院を卒業すれば学問ではなく、フィールドはビジネスの世界なのでそういった面でもとても面白かった。
起業家学は実際に起業する人以外にも社会の中で価値を生み出していくためにはとても重要なことなので、
もう一度復習し、身に着けるための努力をしていきたいです。

2、最も印象に残っている講義(第○講と記してください)とその理由

【第2講】
第二講の起業戦略と新規事業立案戦略ー6W2Hが印象に残っています。
この講義は事業を作るために必ず必要な基礎の部分であり、
だからこそこの領域をどれだけ深められるかが成功を握っていると感じたためです。
事業を作る以外にも自分が将来の行動を取捨選択していく中でも
とても大切なことなので上げさせていただきました。

3、この講義を受けて、自分がこれからの人生をいかに生きていくか実践の「置換え」を表明してください

起業てすごいなという漠然とした印象があったためこの講義を受講しようと決めてから、
さまざまなことを学びました。
何より大切なことは第1講でも紹介があったとおり「志は気の師」で
あるので、強い意志をもって生きていきたい。

【AHさんの講義の感想】

1、この情報技術経営論を受講しての全体の感想

学部(工学部)では物理,大学院数学をメインとした授業だが,
経営という分野に触れることができる授業でとても新鮮だった

2、最も印象に残っている講義(第○講と記してください)とその理由

【第4講】
第4講 (ビジネスは問題から生まれるー問題把握、現状分析と客観視 )
これは起業以外に関しても言えることだと思った.
問題の提起とその解決策を講じることでより良い雰囲気で物事を進められると感じた.

3、この講義を受けて、自分がこれからの人生をいかに生きていくか実践の「置換え」を表明してください

自分は実際に起業をしたいと思っているので
この講義で得た知識やノウハウを存分に発揮していきたい

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今年は急遽オンライン授業でしたが、
グループワークもSlackとZoom、Google classroomを利用することにより、
例年に近い形で進めることができました。

今年も熱心に多くの学生さんが取り組んでくれましたし、
ゲストスピーカーとして起業家の皆様にご協力いただき、
充実した講義をすることができました。

コロナ禍においての講義ではありましたが、
オンラインを活用しながらも、
同時にリアルの熱量をお伝えすることができればと工夫したところです。

レポートは毎回提出としていましたので、
合計500本を超えるレポートを読んで採点しましたが、
読む側も勉強になりました。

この講義を受けた学生さんたちが、
今後、大学院生から次のステージへ飛び立ったときに、
何かしらの役に立てばよいなと思うところです。

(第3991号 令和3年8月18日(水)発行)