消費税減税へ─自民党税調で賛成意見を述べる

政府は令和8年8月5日、
令和9年(2027年)4月から2年間に限り、
軽減税率の対象となっている飲食料品の消費税率を、
現在の8%から1%へ引き下げる基本方針を決定しました。
さらに、1%相当分の範囲内で、
中低所得者を中心に「所得に連動したきめ細かな給付」を行い、
制度全体として飲食料品の消費税負担を「実質ゼロ」とする考え方です。
平成元年(1989年)に消費税が導入されて以来、
実現すれば初めての税率引き下げとなります。
それに先立つ8月3日、
自民党税制調査会・社会保障制度調査会合同会議が開催され、
私も上京して参加しました。
この会議は長時間にわたる議論となり、
75人が発言し、賛成65人、反対9人、中立1人とのことでした。
私はこの会議で、主に次の趣旨の発言をしました。
●これからの日本は、デフレではなく、
「インフレを前提とした制度設計」が必要である。
●物価上昇によって家計の実質的な購買力が低下する一方、
税収は名目額で増加している。
●国民生活が苦しいという声が強いなか、
税収増加分の一部を、国民の皆様に分かりやすく、
目に見える形で還元することが必要ではないか。
●今回の議長案は、
迅速性と公平性の双方を考慮した現実的な案であり、賛成。
私は今回の議論で、
「インフレ時代の税制」ということを、
もっと真剣に考えなければならないと思っています。
日本では長い間、
「物価が上がらない」
「賃金もなかなか上がらない」
というデフレを前提に、多くの制度がつくられてきました。
しかし現在は状況が変わっています。
総務省の消費者物価指数を見ると、
令和8年5月の総合指数は2020年を100として113.5。
つまり、平均的な物価水準そのものは、
2020年当時よりかなり高いところまで来ています。
物価上昇率が少し落ち着いたとしても、
一度上がった価格が元に戻るわけではありません。
スーパーに行けば、
お米、野菜、肉、魚、加工食品など、
以前より高くなったと実感されている方は多いと思います。
一方で、税金は基本的に「名目額」で計算されます。
たとえば100円だった商品が120円になれば、
同じものを一つ買っただけでも、
価格に比例して消費税収は増えます。
所得税についても、
物価上昇に合わせて給与が名目的に増えた場合、
税率や所得控除などが物価に合わせて動かなければ、
実質的な生活水準がそれほど改善していなくても、
税負担が増えることがあります。
つまりインフレになると、
「生活者の購買力は低下する一方で、
政府の税収は名目ベースで増えやすい」
という現象が起こり得ます。
だからこそ、
「30年間デフレを前提としてきた税制や社会保障制度を、
インフレを前提として再設計する必要がある」
と考えているところです。
今回の飲食料品の消費税減税は、
その意味でも大きな転換です。
例えば、
現在、軽減税率8%の対象となる飲食料品を
税込で月8万円程度購入している家庭を考えてみます。
単純計算ですが、
税率が8%から1%になり、
税率引き下げ分が価格にそのまま反映された場合、
負担軽減額は月約5,200円、
年間では約6万2,000円になります。
毎日のスーパーやコンビニでの買い物ですから、
所得税減税などとはまた違って、
比較的効果を実感しやすい減税だと思います。
もちろん、課題もあります。
消費税は令和8年度予算で、
国税だけでも約26.7兆円が見込まれている非常に大きな税収です。
社会保障や地方財政との関係を無視することはできません。
また、
消費税の約4割は地方の税財源につながっているため、
地方自治体の財政運営に支障が出ない仕組みも必要です。
さらに今回の制度では、
スーパーなどで購入する飲食料品は1%、
一方で外食は原則10%、
という税率差がこれまで以上に広がります。
飲食店への影響についても考えなければなりません。
農業者などへの影響、
事業者の資金繰り、
レジや会計システムの変更などもあります。
こうした点については、
党の取りまとめでも、
農業者への対応、
外食産業等への資金繰り支援、
税率変更に柔軟に対応できるシステムの普及促進などを
検討することとされています。
そもそも今回、
「なぜ0%ではなく1%なのか」
という疑問を持つ方もいらっしゃると思います。
社会保障国民会議での事業者ヒアリングでは、
0%とする場合にはシステム上さまざまな追加対応が必要となる一方、
1%への引き下げであれば、制度の詳細公表後5~6カ月程度で対応可能との見解が示されました。
とのことでした。
物価高に苦しんでいる方々への対策ですから、できるだけ早く実施することも重要です。
そこでまず1%まで税率を下げ、
さらに所得に連動した給付を組み合わせることによって、
中低所得者の負担をより厚く軽減し、全体として「実質ゼロ」を目指す。
これは、
「広く、早く届く減税」
と
「必要な方に重点的に届く給付」
を組み合わせる考え方とも言えます。
そして、この制度は2年間で終わりというだけではありません。
その先には、
令和11年度からの
「所得に連動したきめ細かな給付」の本格導入が議論されています。
つまり、
令和9年度からの飲食料品減税は、
現在の物価高に対応する緊急的な措置であり、
その先には、
所得や家族構成などに応じて、
よりきめ細かく負担を調整する制度へ移行していく、
という大きな税・社会保障制度改革の入口でもあります。
もちろん、
財源をどうするのか。
2年後に税率を戻す際にはどうするのか。
減税分が本当に販売価格へ反映されるのか。
社会保障財源をどう安定的に確保するのか。
地方財政をどう守るのか。
検討しなければならない課題はまだたくさんあります。
しかし政治にとって大切なのは、
制度を守ることそのものではなく、
経済社会の変化に合わせて制度を変え、国民生活を守ることです。
30年間続いたデフレから、
日本経済は大きく変わりつつあります。
税制も、
予算も、
社会保障も、
「デフレ時代にはどうだったか」
ではなく、
「インフレ時代にどうあるべきか」
という視点から考え直さなければなりません。
物価が上昇すれば、同じ1万円の価値は実質的には小さくなります。
それにもかかわらず、税制上の各種基準や控除、社会保障の給付額などが名目額で固定されたままであれば、制度そのものが知らないうちに国民にとって重くなっていく可能性があります。
だから私は、今回の消費税減税だけでなく、
所得税の課税最低限や各種控除、社会保障給付などについても、
物価上昇を踏まえた制度設計が必要になってくると考えています。
今回の消費税減税を、
単なる一時的な減税に終わらせるのではなく、
インフレの時代にふさわしい税制、
そして国民の皆様が経済成長を実感できる制度へと
つなげていくことが重要だと考えています。
衆院選で掲げた公約でもあります。
今後、具体的な法案や予算の議論が進んでいくことになりますが、
実際に国民の皆様の負担軽減につながる制度となるよう、
私も国会議員としてしっかり取り組んでまいります。
(第5805号 令和8年8月6日(木))