東京パラ、シッティングバレーボールの波田みか選手から学ぶこと

「パラリンピック 自分は戦えずとも いちばん近くでエールを」
(NHKパラスポーツ 2021-09-03 午後 05:07)
⇒ https://www3.nhk.or.jp/sports/news/k10013241121000/index.html

東京パラリンピックが2012年のロンドン大会以来、
3回目の出場となったシッティングバレーボール女子日本代表。

「シッティングバレー」をこの東京パラで
初めて見たという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この「シッティングバレーボール」は、座ってプレーする6人制バレーボール。
ボールは一般のバレーと同じですが、コートは半分以下。
ネットの高さは男子が115センチ、女子は105センチ。
1セット25点制で、先に3セット取ったチームが勝利。
障害の重さで2クラスに分かれ、軽いクラスの選手は6人中1人しかプレーできないことになっています。

国内では健常者のみで編成されたチームが出場できる大会もあり、
障害の有無に関係なく一緒に楽しめる競技となっています。

昨日NHKの番組で、このシッティングバレーボール女子の元日本代表、
20歳の波田みかさんについて取り上げられていました。

波田さんは小学6年生の時に骨肉腫を発症し、
右足に人工関節を入れてからシッティングバレーを始めたのだそうです。

若くして最年少日本代表として活躍し、
この東京パラリンピックでも活躍が期待されていました。

しかし、今年3月。

波田さんは激しい頭痛や吐き気を感じて病院へ。

診断の結果は脳の病気である「水頭症」。
その後、脳腫瘍も見つかりました。

波田さんは闘病を続けながら代表入りを目指し続けましたが、
東京パラリンピック出場の夢は断たれてしまったのでした。

東京パラリンピックへの波田さんの思いを考えると、
このときの気持ちはいかばかりかと、胸が苦しくなります。

私だったら絶望し、何もかも投げ捨ててしまいたくなるなと思うわけですが、
波田さんはちがいました。

波田さんは日本代表の真野監督に、
ボランティアとしてパラリンピックに参加することを伝え、

監督からボランティアの申し込み用のサイトを教えてもらい、
病室からすぐに申し込んだといいます。

退院して迎えた東京パラリンピックにおいて、
波田さんはボランティアとして、
選手に最も近いコートサイドで働きます。

選手の出迎えや荷物の受け取り、消毒などを日々、丁寧に行っています。

仲間とコートで再会したのは8月29日。予選リーグ2戦目。
波田さんがコートの入り口にいるのを見つけた選手たちからは
大きな歓声があがったのだそうです。

選手たちは

「波田さんの存在は大きいどころじゃない。本当に勇気や力をもらっている。
 コートに来てくれるだけで心が癒やされるので、
 それが力になってプレーできている」

と口をそろえて話したそうで、

このボランティアの波田さんの行動こそが、
まさに「パラリンピックの精神」を実践しているなと感動しました。

【パラリンピックの価値】

国際パラリンピック委員会(IPC)では、
パラリンピアンたちに秘められた力こそが、パラリンピックの象徴であるとし、
以下の四つの価値を重視しています。

勇気
マイナスの感情に向き合い、乗り越えようと思う精神力

強い意志
困難があっても、諦めず限界を突破しようとする力

インスピレーション
人の心を揺さぶり、駆り立てる力

公平
多様性を認め、創意工夫をすれば、誰もが同じスタートラインに立てることを気づかせる力

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波田さんは、パラリンピックに出場することは残念ながらできませんでした。

小学生のときに大きな病気になって以来、
障害を持ち困難と闘ってきたのだろうと思いますが、
そこから「シッティングバレー」と出会い、
日本代表選手になるまでに大きく成長されました。

そこでさらに大きな病気に見舞われ、
大きな夢であった東京パラリンピック出場への道が断たれました。

そこで逃げることなく、すぐにボランティアとして参加をする、
波田さんに勇気と強い意志を感じます。

このエピソードを聞いただけで、
心が揺さぶられ、素晴らしいことだなと感じるところです。

そしてさらには、
ボランティアとしてパラリンピックを支えることにより、
裏方として参加し、選手たちのプレーを応援しているんですね。

スポーツは、人間を成長させてくれます。

金メダルを獲得するアスリートはもちろんのこと、
メダル獲得のアスリート、入賞したアスリート、
そして参加した選手や、その競技を支える方々、
さらには全国、全世界で競技を楽しむ方々、
そしてスポーツを観戦する方々、

多くの方々がスポーツを通して、
学び、成長すると思いますし、

波田さんのようなトップアスリートから学ぶことはたくさんあるように感じます。

東京2020パラリンピックは、
いよいよ明日9月5日が最終日となります。

(第4008号 令和3年9月4日(土)発行)