横田滋さんの逝去を悼み、拉致問題について考える

北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの父親で、
40年以上もの間、めぐみさんの救出活動を続けてきた横田滋さん
令和2年6月5日午後、老衰のため亡くなりました。

87歳でした。

私は、
「北朝鮮に拉致された日本人を救出し支援する宮城県議の会事務局長」
を務めており、拉致問題に当選前から取り組み、
様々な活動を宮城県内で進めてきたところです。

横田滋さんをはじめ家族会のみなさんとともに、
毎年全国集会に参加したり、仙台において定期的にやっている署名活動も、
仙台七夕のときには家族会のみなさんと汗をかいたりしています。

県議会で拉致問題についての周知を取り上げたり、
宮城県庁職員5742名の方々の署名をいただく活動などもしてきました。

救う会宮城のみなさんのご尽力と、
県議会拉致議連の連携で様々な啓発活動も進めてきたところです。

毎年拉致の全国集会に出席されていた横田滋さんが、
年々出席が大変になっているご様子も間近で見ていましたので、

一日も早くめぐみさんが帰国されることを、
私もそうでしたが、誰もが待ち望んでいたことと思います。

横田滋さんがめぐみさんと再会できなかったことは、
本当に残念なことです。

めぐみさんが拉致されたとき、
横田滋さんは45歳とのことで、
いまの私と同じ年です。

中学生の娘を持つ一人の父親としても、
本当に胸が痛みます。

しかし胸が痛むだけではダメですので、
拉致被害を受けた方が一日も早く帰国できるためにはどうしたらよいか、

力のない微力な自分が何をできるか、
やれる限りのことはやってきたつもりです。

救う会宮城のみなさんも、
手弁当で様々な活動をやって下さっています。

しかし結果になかなかつながらないのは、
本当に残念です。

拉致問題は、
国内の政争の具にしてはいけないと思っています。

拉致問題は人権侵害の問題であり、
北朝鮮による国家的犯罪です。

国家主権の侵害でもあり、
宣戦布告はないものの戦争に近い状況であると言えなくもありません。

日本政府が認定した拉致被害者は17人。

そして北朝鮮による拉致の可能性を排除できない行方不明者は878人とされ、
そのうち、都道府県警察のウェブサイトに
家族等の同意を得て掲載されている方々のお名前が公表されています。

⇒ 「拉致の可能性を排除できない事案に係る方々」(警察庁)

めぐみさんだけではなく、
戦後の、平和といわれる日本で、
これだけの方々が北朝鮮の工作員によって
拉致をされているという事実、

そして全世界において、
平成に入ってからも、
さらに21世紀になってからも、
北朝鮮が拉致をし続けているということも明らかになってきています。

北朝鮮による拉致問題は、
過去の話ではなく現在進行形の問題なのです。

毎年救う会宮城の方々を中心に、
宮城県議会拉致議連・仙台市議会拉致議連で、
仙台七夕期間中に署名活動を行っていますが、
このときにインターンの大学生などにも手伝ってもらっています。

平成生まれの大学生は、拉致問題を知らず、
小泉元総理が訪朝し拉致被害者を連れて帰ってきたということも、
知らない世代になりつつあります。

若い世代にも拉致問題の啓発活動をということで、
私も議会などで取り組んできましたが、
ぜひアニメ「めぐみ」などを、
若い世代の方々にもご覧いただければと思うところです。

アニメ「めぐみ」(政府インターネットテレビ)
⇒ https://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg1754.html

そして、何よりも、こうした啓発活動に加えて、
日本国民が拉致問題に関心を高め、
北朝鮮に対して怒りを見せなければなりません。

拉致問題をめぐり、日本国内が政争になったり、
政権批判や政党批判をするような人が増えると、
喜ぶのは北朝鮮です。

日本人は拉致をしても、何の反応もなく、
むしろ政権批判につながり国がぐらつく、
北朝鮮にとっては御しやすい国だ、
とみられることは、

被害者帰国につながらないばかりか、
拉致被害を増やすようなことにもなりかねません。

日本の世論が団結して拉致被害に怒りを見せる、
そんな活動をしていかなければならないわけです。

しかし残念ながら、
署名活動をしていても年々関心は薄くなっているのを感じますし、
政治家でも関心を持っていないなという方も感じられます。

拉致被害者の全員帰国を意思表示する
「ブルーリボン」があります。

この思いを共有している方は、
ブルーリボンを胸につけてくださっています。

政治家でもブルーリボンをしている方がいらっしゃり、
拉致問題への強い関心を持ってくださっているなと
ありがたく思います。

しかし、私はあえて、
ブルーリボンをしないことにしています。

なぜかというと、
拉致問題が話題になったときや、
マスコミが取り上げる拉致問題の集会のときにだけ、
ピカピカのブルーリボンを胸にする政治家を何人も見てきており、
表だってはいいませんが、
どうも腹の虫がおさまらず納得がいかないからです。

ときどき、

「渡辺さんはブルーリボンをしていないから応援しません」

ということを言われます。

おそらく、私の拉致問題への思いや
今までの活動を知らない方だと思いますし、
私の活動を知っていてブルーリボンをするべきだという方もいると思いますが、
それはそれでかまいません。

私はピカピカのバッジを年に一回着けるというパフォーマンスではなくて、
実際の政治活動を通して、
拉致問題の解決に力を尽くしたいと思っているだけです。

その代わり、私は定期的にブルーリボンを購入しています。
ぜひ拉致問題に関心を持った方は、
購入へのご協力をお願いできればと思います。

「ブルーリボンバッジ、支援金の申込み」(救う会全国協議会)
⇒ http://www.sukuukai.jp/index.php?itemid=1145

いずれにしても、
北朝鮮による拉致被害は、
複雑な国際情勢も相まって、

北朝鮮という特殊な犯罪国家がわが国の身近にあり、
平和国家日本とは程遠い状況が生み出されている、
そんな状況を今一度国民が共有していかなければならないと思っています。

横田滋さんがお亡くなりになったことは本当に残念で、
私たちの活動が実っていないことであり、
無力感にもつながるわけですが、

しかしそれでも、継続して、
この活動に取り組んでいかなければなりません。

わが国は戦後であっても平和ではなかったといえますし、
現在すぐご近所の東アジア情勢は風雲急を告げる状況です。

平和を守るための努力を第一に、
そして横田滋さんをはじめとする、
拉致被害にあったご家族のみなさんのような状況に、
わが国において二度となってはいけない、

そのための活動を地道にそして懸命に引き続き、
続けていきたいと思います。

そしていつの日か、
拉致被害にあった方々が全員帰国し、
家族のみなさんの笑顔を見ながら、

すべての拉致関係の活動を終え、
拉致議連を解散させることを心から待ち望むところです。

(第3553号 令和2年6月6日(土)発行)