床の間を背にして座る責任の重さについてー宮城県議会環境福祉委員会で女川原発再稼働の請願を採択
昨日10月13日、
私が委員長を務める宮城県議会環境福祉委員会で、
東北電力女川原子力発電所2号機の再稼働の是非をめぐって、
自民党などの賛成多数で再稼働を求める請願が採択されました。
ここ数日、テレビや新聞等で大きく報道されているところです。
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【引用ここから】
原発再稼働 県議会委員会は容認(NHK仙台)
10月13日 16時25分
⇒ https://www3.nhk.or.jp/lnews/sendai/20201013/6000011974.html
東北電力女川原子力発電所2号機の再稼働の是非をめぐって、
13日、県議会の環境福祉委員会が開かれ、
自民党などの賛成多数で再稼働を求める請願が採択されました。
委員会として再稼働を容認する姿勢を示したことになり、
県議会は今後、今月22日の本会議で、最終的な判断を示すことにしています。
東北電力が再稼働を目指す女川原発2号機をめぐっては、
原発が立地する女川町と石巻市の議会が再稼働を容認する姿勢を示していて、
県議会の議論の行方が注目されています。
県議会には、再稼働に賛成の請願1件と陳情3件、
再稼働に反対の請願1件が提出されていて、13日に開かれた環境福祉委員会で、
賛成・反対それぞれの請願について議論が行われました。
この中で、再稼働を容認する立場の自民党などは、何も発言しませんでした。
一方、反対の共産党は、
「原発の安全性の確認もまだされていない。
改めて審査の場を設けることも必要ではないか」と、
さらに議論を行うべきだと主張しました。
このあと、委員長を除く9人の議員で採決を行い、
再稼働に賛成する請願は、自民党や公明党など6人が賛成、
共産党や社民党など3人が反対し、賛成多数で採択されました。
これによって、委員会として再稼働を容認する姿勢を示したことになります。
県議会は、今月22日に開かれる本会議で議長を除くすべての議員で
採決を行い、県議会としての最終的な判断を示すことにしています。
自民党会派に所属する、環境福祉委員会の渡辺勝幸委員長は、
「国の担当者とも議論を深めた上で、請願の採択はかしなく議論されたと受け止めている。
これまでの議論の中で、避難計画の実効性の確保や道路整備などの課題も出てきたので、
本会議で各会派が討論するのではないか」と述べました。
委員会の委員で、自民党会派の代表も務める高橋伸二議員は、
「代表質問と一般質問でも質疑が行われ、その内容を考慮したほか、
先日、実際に女川原発2号機を視察して、安全性の確認もしている。
そういったことを踏まえて、きょうの結論を出した。
原発の再稼働については、容認せざるを得ない状況だ」と述べました。
今回の結果について、立憲民主党などでつくる会派の佐々木功悦議員は、
「賛成する方々は再稼働によって経済効果があると主張するが、
それについては異論がある。もっと吟味したかったが、議論を封じられた。
どう考えても熟議を尽くしたとは思えず、本当に残念だ」と述べました。
今回の結果を受けて、再稼働に反対する請願を
共同で提出していた市民団体が記者会見を開きました。
市民団体の1つで代表を務める佐藤郁子さんは、
「怒りでいっぱいです。委員会では、およそ2時間の審議だけで結論が決まってしまい、
残念に感じているし、まだ議論すべきことがたくさんあると思います」と話していました。
市民団体は今後、村井知事に対して、
再稼働を容認しないよう求める申し入れを行うことにしています。
村井知事は、「今後、議会として具体的な意思が示されれば、
その内容に加え県内の市町村長の意見をしっかりと伺った上で、
再稼働について総合的に判断していきます」というコメントを出しました。
【引用ここまで】
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10月2日以降、県議会4会派の代表、
前県議と市民団体の方々、
環境福祉委員会の3委員より、
委員会運営についての要望を3項目いただきました。
1、請願者の代表に意見陳述の機会を与えていただくこと。
2、女川原子力発電所2号機の再稼働を考えている東北電力、
および双方の請願者が推薦する有識者を参考人として招致していただくこと。
3、請願を審査する常任委員会を希望する県民が傍聴できるように、
最大限の配慮をしていただくこと。
通常の委員会審議で参考人をお招きするときは、
開催一か月前の委員会で参考人を決定し、
およそ2週間前に正式事務手続きをすることになっており、
直前の時間がない状況で、
この3項目をどう実現するかということで、
先週、私はかなり頭を悩ませました。
「請願」とは、憲法16条で保障されている、
「国や地方公共団体の機関(国会、地方自治体の議会を含む)に対して、
その職務に関する事項についての希望・苦情・要請を申し立てる権利」
です。
そしてこの請願権は、
これを実質的に保障する見地から、
請願をしたことを理由として不利益な対応を受けることがないことを
憲法上保障されているところです。
また、適切な請願として憲法上の保護を受けるためには、
「平穏なる態様」にて行うことが求められるとされており、
今回の判断にあたっては、賛成、反対の両方の請願者が
意見陳述をされたいと強い申し出があるならば、
その可能性を検討する必要はあるものの、
一方の意見陳述の場を設けることは公平でないと考えたところです。
そしてそもそも、請願権は憲法で保障されているものの、
請願者が議会で意見陳述することを
議会として制度化されているところはないのではないでしょうか。
請願には「紹介議員制度」があり、
今回宮城県議会に提出された請願も紹介議員がいらっしゃいますが、
これはその請願について紹介議員が責任を持つという、
そのの役割に重きを置いた制度であり、
請願者が、議会の公開の場で説明を求められるということも、
喜んでやりたいという方もいらっしゃるでしょうが、
そうでない方もいるだろうと推測されるものです。
今回の委員会の審議のなかでも委員から指摘されていましたが、
請願者が議会で説明をするということが当たり前になってしまうことにより、
請願権提出についての萎縮効果も、
やはりあるのではないかと考えます。
傍聴については、議会規則により、
常任委員会に付託された時点で、
単独の委員会室で行うことが決められており、
いずれの請願も環境福祉委員会に付託することは
本会議で決定されておりました。
可能性として、委員長の提案で傍聴席を、
さらに確保することも可能かどうか、
様々な角度で検討をしましたが、
新型コロナウイルス感染症対策で県議会全体で密を避ける工夫をしているところ、
傍聴者を増やすということはなかなかむずかしいことで、
最終的に報道関係者の方々の取材を抑制すること以外は難しい
という結論に達しましたが、
これもまた当然ながら難しいということで、
3項目の要望は、
このほかいろいろな可能性を想定し、
先週多数の関係者にご協力をいただきましたが、
議会のルールも含めハードルが高く、
どれも実現が難しいという結論に達しました。
最終的には先輩議員などからもアドバイスをいただきながら議論し、
9月24日に全員協議会で実施した政府担当者をあらためて委員会にお招きし、
補充的に参考人質疑をすることで、
議論を深める一助にしたいということで、
12日の環境福祉委員会で正式提案をしたところです。
13日の環境福祉委員会においては、
午前11時から参考人として、
資源エネルギー庁、内閣府の担当者の方に、
急きょ宮城県議会に足をお運びいただき、
委員会の全会派から質疑をしていただいたところです。
急な話にもかかわらず、
ご説明いただきありがたいことでした。
質疑は想定していた時間を超え、12時20分過ぎまで続き、
次の会議にご迷惑をおかけしましたが、
補充的質疑は議論を深める一助になったものと感じました。
そして13日午後1時30分から、
女川原発再稼働反対の請願、賛成の請願についての質疑を行いました。
この質疑は長くなるだろうと事前に想定し、
会派内でもその旨相談し、
休憩時間の設定や夜にかかった場合の手続きなど、
議会事務局のみなさんには様々な想定をしていただきましたが、
翌14日に委員会開催もやむを得ないということ、
14日午後にセットされていた予算特別委員会の採決も場合によっては、
遅らせることもやむを得ないだろうという想定をしていただいたりして、
とにかく議論を尽くすことの環境整備だけはしようということで、
進めていたところです。
しかし予想に反して、当日13日の請願の質疑においては、
委員長である私に対する質疑のような形になり、
参考人として原子力規制庁を呼ぶべきではないか、
などの声がありましたが、
内容に関する質疑はなく、
答弁側に県執行部のみなさんもいらっしゃいましたが、
執行部側に対する質疑もありませんでした。
結局、
それ以上他に質疑がないことを確認しましたので、
採決をすることとし、
反対の請願について不採択、
賛成の請願について採択という結果になりました。
そしてその後、少数意見の留保がなされました。
報道では「委員長が早々と質疑を打ち切った」と書かれましたが、
後に続く質疑がなかったので、採決に入ったところであり、
そこで採決を止める委員がいなかったこともまた事実ですし、
継続審査を求める動議なども出されませんでした。
傍聴席からは何度も私に対して厳しいヤジが飛び、
また報道関係者の方も普段以上にいらっしゃり、
なかなか緊張する委員会運営で大変でした。
河北新報の一面でここまで厳しく否定されることも
なかなかないと思いますが、
賛否の議論はともかくとして、
委員会運営としては、規則上も含めて、
瑕疵なく進めることができたものと思っています。
12日、13日を振り返ってみると、
今回は委員長としての役回りとしての巡り合わせではありますが、
いわゆる「床の間を背にして座る責任の重さ」を感じたところです。
委員会の運びや三項目の要望実現のためには、
事前の根回しも含め、先輩議員や会派の役員のみなさんに相談しながら、
また関係するいろいろな方のご協力をいただいて進めました。
結果としてうまくいったといえるのか、
何とも言えないところですが、
しかし委員会室に入った瞬間から、
全責任が自分にあるというのは大変厳しい緊張感でした。
家に帰ってから夜も、
要望項目はこうすれば実現できるのではないかとか、
委員会でこうなったらこういう対応をしようとか、
いろいろ考えながら床に就いたりして、
よく眠れたものの朝早く目が覚めたりして、
たいへんな毎日が続いているところです。
知事や議長、首長、そして長といわれる方々、
経営者の方もそうなんだろうなと思いましたし、
昔の戦国武将はこの緊張感とも戦っていたのかな
などと考えたりもしました。
明日以降は決算の審議もありますし、
最終日の本会議もありますので、
この緊張感を最後までもちながら、
覚悟をもって、
10月22日までこの9月議会を乗り切りたいと思っている次第です。
(第3683号 令和2年10月14日(水)発行)