チャーリー・カーク、安倍晋三、民主主義と和の政治

 

今年9月10日、米国の保守活動家、チャーリー・カーク氏が、
講演中に銃撃され死亡しました。

暗殺の瞬間の動画が流れてきて、
私も見ましたが、暗殺は一瞬でした。

令和4年の7月8日、安倍晋三元内閣総理大臣は、
奈良県で手製銃により背後から2発撃たれ、亡くなられました。

この映像も多くの方がご覧になったことと思います。

 

政治的主張や立場が異なることは、
わが国をはじめ民主主義国家では当然あり得ることです。

むしろ多様な意見のぶつかり合いや議論の中から、
「より良い選択肢」を見いだしていくことが重要であると考えます。

私も政治家として、
政治的主張が異なる方との議論を毎日のようにしていますが、
お互いの主張を通して、半歩でも歩み寄ること、
あるいは半歩でも歩み寄ってもらうよう努力することを繰り返しています。

立場の異なる政党の方であっても、
敬意をもって議論し、最適解を求めます。

その中で時間が迫っている場合、
与党としての責任があるときには決断をすることもあるでしょう。

 

しかしどんなに意見が隔たっていたとしても、
「暴力で他者の命を奪う」ことは、
いかなる理屈をもってしても正当化することはできません。

 

もちろん、政治的主張が異なる相手には、

「全く議論が通じない」とか「対話が無意味だ」と感じることもないわけではありません。

そこから過激な手段に訴える人が世の中にはいる、ということも、
私は街頭でごくまれに見てきました。

 

しかしそれでも「暴力」による解決は、以下のような課題があると思います。

一つは、「議論を遮断してしまう」という問題です。

暴力は、政治的主張を物理的に封じるため、
議論が深まらず、社会的に合意形成ができたであろう可能性を破壊します。

二つ目は、「恐怖と対立の連鎖」です。

わが国はまだよい方だとは思いますが、
暴力には必ず報復が生まれ、社会に不信と不安を招きます。
対話よりも一方的な動きが生まれてしまいます。

三つ目は、「命の価値が軽視される」という問題です。

命が軽くなれば、人間関係の倫理も、
国家も含めた共同体がもろいものになってしまいます。

 

歴史を振り返ると、こうした「暴力」による解決の問題が積み重なり、
世の中が破壊されてきたために、
「民主主義体制」が生まれてきました。

異なる政治的意見は「選挙」というルールの中で、
選択をしていく。

「選挙」により対立を抑制し、
最適ではなくてもよりよい解決策を求める、
そして「選挙」が暴力を否定するための装置でもあったわけです。

 

近年、選挙にも様々な課題が指摘されていますが、
選挙を基本として、議論をする、合意形成をする。

このことを大切にしなければならないと思います。

 

チャーリー・カーク氏は講演という公開の場で、
政治的主張をしていましたが、
暴力によりその主張は奪われました。

安倍晋三元首相は、街頭での演説という人々に語りかける場所で、
その政治的主張を奪われました。

もしかすると、
私も街頭で命を失う場面があるかもしれません。

暴力が当たり前の社会になっていけば、
異なる政治的主張は、暗殺により消滅させることが早いと考える人が増えるかもしれません。

 

そうであってはならない、
そしてそのためにはどうすべきか。

 

わが国が古来大切にしてきた、

「和を以て貴しとなす」

という、聖徳太子の「十七条の憲法」の第一条を、
もう一度私たちが拳拳服膺し、そして世界中の人々に届けていくべきではないかと思うのです。

 

聖徳太子の時代、当時の日本は、
豪族同士の争いや、仏教受容をめぐる対立が続いていました。

その中で聖徳太子は、国家をまとめるためには権力争いや対立ではなく、
協調と調和を尊ぶ姿勢が必要だと説いたのです。

ただし、この「和」は単なる妥協や迎合ではなく、
議論や意見の違いを踏まえたうえで最善の解を導き出すための前提としての「和」でした。

言い換えれば、異なる立場や意見を尊重しながらも、
社会全体の安定や共同利益を優先する「協調の精神」を意味します。

 

わが国が大切にしてきた「和」という概念。

対立を煽るのではなく、
相手に敬意を持ちながら、
対話と議論を大切にする。

選挙を尊重し、暴力を否定する。

こうした民主主義社会の根底に、
日本人が古来大切にしてきた「和」という概念をもう一度取り戻す、

そんな活動が今こそわが国で、
そして世界で求められているように思えてなりません。

 

チャーリー・カーク氏、安倍晋三元首相のご冥福を心よりお祈りしながら、
彼らの死を決して無駄にしない、
そんな世の中をつくる努力をしていきたいと思います。

 

 

(第5490号 令和7年9月25日(木))