宮城県議会県民所得向上対策調査特別委員会で県内調査ー株式会社佐浦、JAみやぎ登米、株式会社ヤマコ佐藤、鳴子温泉郷観光協会、株式会社タカショクを訪問

5月12日、13日と、
宮城県議会県民所得向上対策調査特別委員会(伏谷修一委員長)の県内調査で、
株式会社佐浦、
JAみやぎ登米、
株式会社ヤマコ佐藤、
鳴子温泉郷観光協会、
株式会社タカショク
を訪問しました。
県民所得向上のため、地域経済を元気にしている企業や団体、
そして県産品輸出やインバウンド対策の取り組みなどを主に伺い、
非常に参考になるお話をたくさん聞くことができました。
メンバーは以下の通りです。
委員長 伏谷 修一 (自由民主党・県民会議)
副委員長 平岡 静香 (みやぎ県民の声)
委員 ゆさ みゆき (みやぎ県民の声)
委員 三浦 一敏 (日本共産党宮城県会議員団)
委員 中島 源陽 (無所属)
委員 横山 のぼる (公明党県議団)
委員 さとう 道昭 (自由民主党・県民会議)
委員 伊藤 吉浩 (自由民主党・県民会議)
委員 渡辺 勝幸 (自由民主党・県民会議)
委員 菊地 恵一 (自由民主党・県民会議)
●株式会社佐浦(塩竃市)「日本酒の輸出について」
「浦霞」は、本県を代表する日本酒の一つですが、
佐浦社長によれば90年代から輸出に取り組み始め、
2000年代から積極的に日本酒の認知度を上げる活動に取り組んできたそうです。
2016年には、フランスの著名なシャンパン醸造家とコラボレーションして、
HEAVENSAKE(ヘブンサケ)
⇒ https://jp.heavensake.com/ja
を開発しています。
最近の課題としては、原料米価格の上昇や加工米確保とのことで、
トランプ関税については、関税による価格高よりも、
アメリカ経済をはじめとする消費の冷え込みのほうが懸念されるとのお話もあり、
これはなるほどなと感じたところです。
また、地域間競争に勝ち抜くために、
「GI 宮城」認定酒を用いたプロモーションなど、
県が支援できることはまだまだありそうです。

●JAみやぎ登米(登米市)「コメの輸出について」
宮城県では早い段階から、環境保全米づくりに取り組んでいましたが、
とりわけこの登米市においては、熱心にそして環境保全米の全面転換運動もあり、
令和6年には販売量に占める環境保全米は4分の3を超えるまでに至っています。
現在のわが国の食卓事情においては、
「令和の米騒動」と呼ばれるほどに、米の価格高騰、
そして米が手に入らないということで、
昨年から今年にかけて大きな社会問題となっています。
そのような現在の状況下では、
「米不足のなかで、日本の米を輸出し、
海外からコメを輸入するなどけしからん」
という御意見もわからないわけではありませんが、
昨年の夏までは、日本人の米需要は年々低下、
日本人は米を食べなくなり、米価も低下し続け、
高齢の農業者は廃業するなど担い手も急激に減少しており、
何とかわが国の食文化の基本である米作を維持するために、
「輸出」という手法に農業関係者の皆さんは熱心に取り組んでこられたわけです。
食品輸出の難しさは、
出荷量が激減してしまうと、相手国で購入してくれていた販売先も、
乗り換えてしまうために販路を取り戻すことが非常に困難になるということにあります。
また意見交換のなかで、
「作況指数と実感の差がある」という議論がありましたが、
この問題はここ最近指摘されるようになってきており、
中長期的な取り組まなければいけない課題であると感じました。

●株式会社ヤマコ佐藤(登米市)「県産木材の輸出について」
ヤマコ佐藤さんでは、令和4年に林野庁が主導した、
「国際競争力・木材供給基盤強化対策等交付金事業」
を活用し、大規模・高効率化を実現した木材加工施設を建設、
地元の登米市や南三陸町、栗原市や大崎市の原木丸太を仕入れて、
構造材や下地材の加工、出荷を行っており、
宮城県を代表する会社であり、近年は北米にも輸出をされているのだそうです。
株式会社ヤマコ佐藤
⇒ https://yamako-sato.com/
非常に効率的に丸太が処理され、コストダウンも図られている様子が感じられました。
近年は、国産の木材自給率も増加傾向にあるとのことで、
森林の活性化という観点からも、
これからさらに活躍してほしい事業でした。
●鳴子温泉郷観光協会(大崎市)「インバウンド対策及び誘客について」
昨年、宮城県では宿泊税の導入が決定され、
その財源はインバウンド誘客をはじめとする、
県内観光の活性化のために使われることになっています。
残念ながら、東京や大阪、京都に比べると、
鳴子温泉にインバウンドの誘客はまだまだという感じでもあり、
コロナ以前の誘客数にはまだ及ばない状況のようでしたが、
今後の課題や現状について、様々ご意見を伺いました。
鳴子温泉は多様な泉質があり、多くの源泉があるということで、
全国的にも有名で、美肌効果のあるその泉質に国内各地から訪れる方も多い温泉です。
そして最近では、若い世代の方々によって、
新しいカフェや店舗がオープンする動きが出てきているとのことで、
街中を回遊する動きがさらに活性化していくよう、
施策が求められていると感じましたし、
地域の活性化にとって期待される、よい傾向だなと思います。

●株式会社タカショク(栗原市)「コメの輸出について」
宮城の米を世界市場へということで取り組んでこられたタカショクさんですが、
やはりこちらでも、
米が売れない、みやぎ米が買いたたかれている状況のなか、
年配の生産者はあきらめ、離農する動きが頻発、
なんとかしたいという思いから、
みやぎ米、特に「金のいぶき」を中心に、
香港、タイ、アメリカ、イスラエル、台湾、シンガポールなどへ
輸出をしているとのことでした。
海外では玄米食が非常に人気で、需要が拡大しているところ、
日本の玄米は、その美味しさから非常に高い評価を受けているのだそうで、
県産の「金のいぶき」の輸出
に取り組んでいるのだそうです。
また、相手国の食文化・嗜好の違いを考えながら、
調理法も含めた提案ができるかどうかというお話もあり、
この観点は重要な指摘だなと感じました。
また、リスク管理や、仙台港の課題など
実際の課題もご指摘いただきましたが、
こちらでもやはり、昨年来の「令和の米騒動」で、
輸出用米制度は大変厳しい状況にあるとのご認識でした。

今回の委員会調査では、
県内各地の先進的な取組をしている企業から、
参考になるお話を伺いながら、同時に課題を共有し、
新たな施策のヒントもいただいたように思います。
県産品輸出は国策にもかなっている施策で、
企業にとっても売上を拡大するチャンスであり、
結果として県民の所得向上につながる貴重な機会ではありますが、
ここ最近の「トランプ関税」や「令和の米騒動」も含め、
状況が一変する可能性もあるリスク要素の高い施策でもあります。
そのなかで思いを持って挑戦している方々が、
宮城県内にたくさんいらっしゃることを今回あらためて知ることができましたし、
国や県がどうかかわっていくか、
またどう規制を外していくか、
まだまだ課題がたくさんあるようにも感じました。
今回もお忙しいところ、
県内調査の機会をいただいた多くの皆様に、
心より感謝申し上げます。
(第5356号 令和7年5月14日(水))