【渡辺勝幸ご報告】東北大学大学院における令和6年度講義が終了しました─「情報技術経営論」講義の内容と受講者の感想を公開します!その4【起業家教育】(終)
今年も令和6年4月から8月にかけて、
毎週月曜日に、
私、渡辺勝幸は、
東北大学大学院情報科学研究科
(https://www.is.tohoku.ac.jp/)
において、非常勤講師として、情報技術経営論の講義をしました。
今年でこの講座を持つのは11年目となり、
名物講義にもなりつつありましたが、
今年をもって大学講師業を終わりにしようと思っております。
この講義を受け社会に巣立って行った方々もたくさんいますし、
Facebookなどで引き続きつながってくださっている卒業生の方もおり、
その活躍が楽しみです。
なかには実際に起業した方もいらっしゃいますし、
最近は学生起業家の受講も増えているのは時代ですね。。。
11年間の「情報技術経営論」の蓄積についてはこちらをごらんください。
⇒ http://cuccanet.blog72.fc2.com/blog-category-45.html
今年の履修者は37名。
今年も優秀な大学院生が受講してくださり、
つくりあげられた事業計画はどれもなかなか素晴らしいものでした。
私がこの4か月間講義した内容と、
大学院生の受講しての感想を以下の項目で書いていただきましたので、
「起業家教育」をテーマとしている私の活動の一端を、
みなさんにシェアしたいと思います。
1、この情報技術経営論を受講しての全体の感想
2、最も印象に残っている講義(第○講と記してください)とその理由
3、この講義を受けて、自分がこれからの人生をいかに生きていくか実践の「置換え」を表明してください。
この講義は、履修者全員に
メールアドレスを登録してもらい、
メーリングリストを作成しました(GoogleGroups)。
このメーリングリストを使って、
1、講義において気づいたこと【気づき】
2、その気づいたことから自分は何を実践するか【置換え】
等の課題を毎週提出していただきました。
以下、学生のみなさんの感想です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【Vさんの講義の感想】
1、この情報技術経営論を受講しての全体の感想
企業で活躍するとはどういうことなのか漠然とした感覚だったが、この講義を通して起業に関する政策やマインドを学んだことで、具体化する助けになったと思う。
2、最も印象に残っている講義(第○講と記してください)とその理由
【第7講】
過去に成功した起業家は普通の人ならあきらめるような困難を乗り越えて成功したことが印象的だった。
自分がそのような困難にあったとき、投げ出さずにいられるか、何が支えになるか考える機会になった。
3、この講義を受けて、自分がこれからの人生をいかに生きていくか実践の「置換え」を表明してください。
今は起業する選択肢は考えていないが、何かを始めたいと感じることは起業だけでなく多くあるはずだ。
そこで、自分の意思を周囲に発信して仲間を集める癖や、とりあえず始めてみる姿勢を取り入れて、機を逃さないようにしたい。
【Wさんの講義の感想】
1、この情報技術経営論を受講しての全体の感想
このコースは起業の流れを教えてくれるだけでなく、様々な起業家が各自のビジネスについて紹介してもらうことで、起業時に注意すべき点やプロセス、また現在の市場や環境について理解することができました。非常に貴重で、学びの多いコースでした。
2、最も印象に残っている講義(第○講と記してください)とその理由
【第7講】
第7回の講義が私にとって最も印象深いものでした。
歴史に名を残す偉人たちも、輝かしい成功の影に数えきれない失敗と挫折を隠しています。
成功とは、つまずきのない道のりではなく、転んでも立ち上がる勇気の積み重ねなのです。
これからの人生で、困難に出会うたびに、それを成長の機会として捉えたいと思います。
要するに、第7回の講義は、私に「失敗を恐れるな、挑戦しないことを恐れよ」という貴重な教訓を与えてくれました。
3、この講義を受けて、自分がこれからの人生をいかに生きていくか実践の「置換え」を表明してください
現在の自分の研究や就活において、時々迷いを感じ、自分が本当に不十分なのではないかと疑問に思うことがあります。
しかし、過去の偉人たちも私と同じように歩んできたことを理解しました。
そのため、私の現在の信念は「失敗するたびに立ち上がり、再び挑戦する」ということです。
成功への道のりは、誰が一番長く耐えられるかを見極めるものです。
今では以前ほど恐れを感じず、前進し続ける力を得たと感じています。
【Xさんの講義の感想】
1、この情報技術経営論を受講しての全体の感想
講義全体を通じて、起業に必要なマインドセットから知識といった様々なことをインプットすることができ、ソフト面でもハード面でも起業というものへの解像度を上げることができたと思います。
今までいろんな場所で起業について勉強してきましたが、ソフトとハードのどちらかに偏った情報を得ることが多く、なかなかそれらのつながりを意識することができずに結局起業が自分から遠いものと考えがちでしたが、この授業では両面について関連付けながらバランス良く学ぶことができたので非常に起業までの流れを意識しやすかった。
2、最も印象に残っている講義(第○講と記してください)とその理由
【第13講】
スタートアップのフェーズとVCの種類について、それぞれの特徴について言及しつつ解説してくださり、どうやってビジネスアイデアを形にしていくかをイメージしやすかったためです。
特に、資金調達の際に、ただ目標額を集めることだけでなく、その投資家と関係を作ることで何が嬉しいのかまできちんと計算するという部分はこれまでの経験ではなかなかイメージがつきにくかったので、知ることができて良かったです。
3、この講義を受けて、自分がこれからの人生をいかに生きていくか実践の「置換え」を表明してください
細かい部分からでも自分の意思決定に明確な理由を持とうと思います。
ゲストスピーカーの皆さんはどなたも成し遂げたい理想があり、そのために行動を行っていました。
そのとき、決してなんとなく行動をしていることはなく、きちんと目的意識や仮説を持って行動されているのだなと感じました。
自分も常に、目標とその意思決定の関連性を意識しながら行動しようと思います。
【Yさんの講義の感想】
1、この情報技術経営論を受講しての全体の感想
ゲストスピーカーそれぞれで大きく経営方針や、そのパーソナリティが全く違うということが大きな発見でした。
経営者は「リスクを恐れずに大きな挑戦をする人」と、一般論で一括りにしてしまっていましたが、大きな挑戦をするにも事前に優れた戦略を立てていらっしゃる方もいれば、とにかくやってみて失敗した時に次の策を考えてアップデートしていくという方もおり、ベースは共通しているが、その先の戦略たマネジメントといった枝葉の部分は人によって異なることを学びました。
参考にする部分を自分なりに取捨選択していこうと思います。
2、最も印象に残っている講義(第○講と記してください)とその理由
【第13講】
この講義では、国内ではなかなか維持が難しいとされる共同代表制をとっているAtomica社でのマネジメント、資本政策の戦略を聞くことができたことが印象に残っています。
共同代表制をとっているとのことで、どのように役割分担をしているのか非常に参考になりましたし、資本政策について、上場までの間に株式比率の希釈化は避けられないということも学びました。
資本政策やマネジメントに関して、より解像度高く説明いただいたため最も印象に残っています。
3、この講義を受けて、自分がこれからの人生をいかに生きていくか実践の「置換え」を表明してください
アントレプレナーシップ精神は、就職しても起業しても、アカデミアに残っても関係なく持つべきであるということを学びました、
私は今後、博士課程への進学を検討していますが、まずはこの研究が社会に対してどう役立てることができるか、解決すべきイシューは何かを常に意識していこうと思います。
その上で、研究内容を用いて起業していこうと思います。
【Zさんの講義の感想】
1、この情報技術経営論を受講しての全体の感想
起業するところから経営を軌道に乗せるところまでの道のりについて,方法論や心構え,資金関連について多くの社長の知識や経験を知ることができたことが面白かったと感じた.
2、最も印象に残っている講義(第○講と記してください)とその理由
【第11講】
行なってきた事業について,どのように進めてきたのかだけではなく,心構えや意識したこと,問題が発生した時の乗り越え方についてとても熱いお話を聞かせていただいたため.
3、この講義を受けて、自分がこれからの人生をいかに生きていくか実践の「置換え」を表明してください
何かを始めるときに,徹底的な事前調査と良い心構えをした上で行なっていくようにしたい.
途中で何か壁にぶつかったとしてもこれまでの経験を活かして乗り越えていきたい.
もし,様々な人々に協力していただいた時は最大限の感謝と思いやりの心を持って伝えるようにしていきたい.
【AAさんの講義の感想】
1、この情報技術経営論を受講しての全体の感想
本講義を通して経営者・起業家としてのマインドと仕組みについて学べた。
起業家としてどのような心持ちと熱意を持つか、それを周囲に伝番させ巻き込んでいけるかはとても大切であると思った。
その上で、自身のビジネスやアイディアに対して財務的支援や応援をしてもらうことに繋げ、ビジネスを回していくことの仕組みも理解できた。
今後のすぐに起業するかはわからないが、起業する時には役立てたいと思う。
また、就職先で労働者として働く際にも、経営者視点での考え方やビジネスの仕組みなどの視点を持って働きたいと思う。
2、最も印象に残っている講義(第○講と記してください)とその理由
【第7講】
私が最も印象に残っている講義は第7講である。
第7講通して、大きなことを成し遂げた偉人たちの背景には多くの失敗や挫折などがあり、それを乗り越えて歴史に名を残す功績が存在していることに改めて気づくことができた。
今後の人生において多くの挫折や失敗があると思うが、それに向き合い挑戦し続ける心を持ち合わせたいと思った。
3、この講義を受けて、自分がこれからの人生をいかに生きていくか実践の「置換え」を表明してください
人生には無数のチャンスがあり、そのチャンスを掴むところから始めていきたいと思う。
チャンスはピンチの中にあるので、さまざまなことに挑戦し、チャンスを掴んでいきたい。
そのためにも、日常において少しでも新しいことをすること心掛けたいと思う。
【ABさんの講義の感想】
1、この情報技術経営論を受講しての全体の感想
講義内容も実りのあるものだったが、やはり受講前の期待通り、チーム活動の経験を積むことができたことを嬉しく思う。
社長としてメンバーと事業開発をしていく過程はなかなか大変だった。
2、最も印象に残っている講義(第○講と記してください)とその理由
【第13講】
嶋田さんが共同代表の良さと相応の困難さを経験されている様子が伺えたので、共同代表でうまく回すのは大変なんだろうと印象に残っています。
それ以外にも、大学生当時の地道な活動についてのお話から、ネットワーク構築の価値も感じられました。
3、この講義を受けて、自分がこれからの人生をいかに生きていくか実践の「置換え」を表明してください
講義からはマインドの持ち方が主に参考になると思う。
紹介してもらったような起業家の試行錯誤と熱意を自分のケースでも持ちたい。
また、次のチーム活動では、今回の社長経験を活かして、マネジメントを意識して望みたい。
【ACさんの講義の感想】
1、この情報技術経営論を受講しての全体の感想
起業のみならず,自分の目標に対する必要な行動を考えるきっかけとなった授業であった.
2、最も印象に残っている講義(第○講と記してください)とその理由
【第6講】
ビジネスとして問題を解決する時に,その問題をどのように捉えて,考えていくかを数段階に分けてわかりやすい説明があったことが印象に残っています.
3、この講義を受けて、自分がこれからの人生をいかに生きていくか実践の「置換え」を表明してください
起業以外にも目標をもって,日々それに対する手段を考えながら,有意義な生活を送ります.
【ADさんの講義の感想】
1、この情報技術経営論を受講しての全体の感想
本講義では起業に対して漠然と感じていたリスクを正しい知識を元に知り,起業家はそれをどのように乗り越えているのかを知ることができた.
2、最も印象に残っている講義(第○講と記してください)とその理由
【第6講】
この講義を通じてアイデアを生み出すところから実際に事業を立ち上げるまでのビジョンを具体的に思い描けるようになったから.
3、この講義を受けて、自分がこれからの人生をいかに生きていくか実践の「置換え」を表明してください
自分は博士課程に進んで研究を続けようと考えているが,その上で常に失敗を恐れずに挑戦し,そこから学びを得ることを続けていきたいと思う.
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
東北大学令和6年度シラバス
【情報技術経営論 Management of Information Technology】
前期(月) 10:30-12:00
情報技術経営論
前期 月曜日 2講時. 単位数/Credit(s): 2.
対象学科・専攻/Departments: 情報基礎科学専攻、システム情報科学専攻、人間社会情報科学専攻、応用情報科学専攻.
学期/Term: 前期. 履修年度: 2024.
使用言語: この講義は日本語で行う。
This class is taught in Japanese..
開講年度
2024
授業題目/Class Subject
起業のエッセンスを学ぶ
授業の目的・概要及び達成方法等
起業家学。会社の作り方、ゼロから事業はいかにしてつくられるか、起業成功のエッセンスを学ぶことにより、ビジネスで成功する極意を習得し、受講者が修士修了後、社会に出たときに即戦力として活躍できることを目的とする。
Google Classroom
授業の目的・概要及び達成方法等(E)
Entrepreneurial Studies.
Students will learn how to build a company and the essence of successful entrepreneurship.
The objective is to prepare students for immediate success.
学修の到達目標/Goal of Study
情報科学を基礎として起業することに理解を深める。
This Class is based on information science and deepens the understanding of entrepreneurship.
授業内容・方法と進度予定/Contents and progress schedule of the class
授業計画
・起業に必要なものは何か─逆境こそチャンス
・起業戦略と新規事業立案戦略─6W2H
・起業支援政策の形成過程─政府の成長戦略とは
・ビジネスは問題から生まれる─問題把握、現状分析と客観視
・実際に事業を「つくる」
・どの会社にも必ず起業家がいる─起業家の歴史
・起業がうまくいくチームは「桃太郎」
・集客、営業の基本─ドラッカーの「顧客の声を聞く」
・値決めは経営─価格はどのようにして決められるのか
・起業とファイナンス
・公益経済と共通価値の実現(ポーターの経営論)
・プレゼンを学ぶ
・起業家ヒアリング(起業支援、家事代行ビジネス、海外進出支援ビジネス、オンライン出版ビジネス、介護事業を中心とした地域と福祉、震災復興からの新規事業の取組みなど)
授業は資料に基づいて行う予定。
Lecture Plan
・What is needed to start a business : Adversity is Opportunity
・Entrepreneurial and new business planning strategies : 6W2H
・The Formation Process of Policies to Support Entrepreneurship: What is the Abe Administration’s Growth Strategy?
・Business is born out of problems : understanding the problem, analyzing the current situation and looking at it objectively.
・How to build a company
・Actually “building” a business
・Every company has its entrepreneurs : a history of entrepreneurs
・A successful start-up team is “Momotaro”
・Basics of customer attraction and sales : Drucker’s “Listening to the Voice of the Customer” (Drucker)
・Pricing is Management : How Prices are Determined
・Entrepreneurship and Finance
・Economy in the Public Interest and Realization of Common Value (Porter’s Management Theory)
・Learn to make a presentation
・Entrepreneur interviews (support for entrepreneurship, housekeeping business, overseas expansion support business, social entrepreneurship, personal training, food, wine and community contribution, future of nursing care business, etc.)
Letures will be based on materials.
成績評価方法/Evaluation Method
レポートで評価する。
Grades will be evaluated by reports.
教科書および参考書/Textbook and references
授業時間外学修
履修者には授業に即した課題を行うことが求められる。
授業時間外学修(E)
Students must do the assignments as they are given.
オフィスアワー
授業開始日に説明する。
オフィスアワー(E)
Office hours will be announced on the first day of class.
実務・実践的授業/Practicalbusiness
※○は、実務・実践的授業であることを示す。
/Note:”○”Indicatesthe practicalbusiness
○
その他/In addition
オンラインでの質問を積極的にお待ちします。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
令和6年度の講義カリキュラムは以下の通りで行いました。
第1講 4月8日 オリエンテーション・起業には何が必要か
第2講 4月15日 起業戦略と新規事業立案戦略ー6W2H
第3講 4月22日 起業支援政策の形成過程ー政府の成長戦略とは
第4講 5月13日 起業家ゲストスピーカーその1「日本と世界を繋ぐビジネスクリエーター 中小企業の国際化支援事業」株式会社KM International 中正宏代表取締役
第5講 5月27日 起業家ゲストスピーカーその2「私が0→1ビジネスに挑む理由」株式会社 IDENTITY 野地数正 代表取締役
第6講 6月3日 ビジネスは問題から生まれるー問題把握、現状分析と客観視
第7講 6月10日 どの会社にも必ず起業家がいるー起業家の歴史
第8講 6月17日 起業家ゲストスピーカーその3「クラウドファンディングによる起業と新しい出版のかたち」株式会社サンガ新社 佐藤由樹 代表取締役
第9講 6月24日 公益経済と共通価値の実現(ポーターの経営論)
第10講 7月1日 起業家ゲストスピーカーその4「越境する福祉」社会福祉法人ライフの学校 田中伸弥 理事長
第11講 7月8日 起業家ゲストスピーカーその5「アクアイグニス仙台設立物語 ~復興から次のステージへ~」仙台reborn株式会社 深松努 代表取締役
第12講 7月22日 プレゼンを学ぶ・ファイナンスについて(お金の借り時はお金を返せるとき)
第13講 7月29日 起業家ゲストスピーカーその6「5年で調達15億円、従業員100名。スタートアップという起業・経営スタイルとは」株式会社ATOMica 嶋田瑞生 代表取締役Co-CEO
第14講 8月5日 【最終講】事業計画発表
11年前にはじめてこの講義を実施した時には、
「起業」自体が大学とは遠い存在でしたが、
いまはすでに起業している学生や、
これから研究をどうビジネス化するかという意識をもって受講する学生が多くなりました。
この講義を今年で終えてしまうのは残念な気持ちもありますが、
受講した学生さんが種を少しでも育ててくれればうれしいなと思っています。
この11年間、熱心に多くの学生さんが取り組んでくれました。
非常に貴重な機会をいただいたことに感謝申し上げるとともに、
また別の形で起業家教育に取り組む機会があればと思っています。
ありがとうございました。
(第5088号 令和6年8月19日(月))