宮城県議会環境福祉委員会県外調査で、宮崎県、熊本県、福岡県を訪問しました

令和6年7月10日から12日にかけて、
宮城県議会環境福祉委員会で、宮崎県、熊本県、福岡県を訪問しました。

メンバーは以下の通りです。

委員長 佐々木 賢司(自由民主党・県民会議)
副委員長 伊藤 吉浩(自由民主党・県民会議)
委員 ゆさ みゆき(みやぎ県民の声)
委員 小畑 仁子(みやぎ県民の声)
委員 ふなやま 由美(日本共産党宮城県会議員団)
委員 横山 のぼる(公明党県議団)
委員 柚木 貴光(自由民主党・県民会議)
委員 渡辺 勝幸(自由民主党・県民会議)
委員 高橋 伸二(自由民主党・県民会議)
委員 佐々木 喜藏(自由民主党・県民会議)

●宮城県議会環境福祉委員会県外調査一日目。
「宮崎県立宮崎病院の再整備の経緯及び病院の機能と役割について」(宮崎県宮崎市 宮崎県立宮崎病院)

四病院再編問題が議論されている宮城県ですが、
宮崎県における県立宮崎病院が、
現在地での全面改築という形で再整備がなされ、

令和4年に新病院が開院したとのことで、
副院長先生はじめ宮崎県の担当の方などからお話を伺う機会をいただきました。

宮崎県立宮崎病院
⇒ https://www.kenritsu-miyazakibyouin.jp/

平成21年に旧病院の敷地内に精神医療センターが開設されていましたが、
今回の再整備を機に7階建て新病院の4階、同じ棟に精神医療センターが置かれています。

新病院は高度医療・急性期医療エリアの拡充、
感染症医療、大規模災害時医療の機能拡充、
患者サービスの向上と地域連携の強化などを進めており、

手術支援ロボット「ダヴィンチ」を導入した手術室、
救急病棟、そして免震構造の地下部分や、ヘリポートの屋上のご説明もいただきました。

病院施設はやはり技術が日進月歩で進んでいますので、
予算的制約はありますが、
新しい施設が県民の福祉向上に資することを感じました。

●宮城県議会環境福祉委員会県外調査二日目。
「延岡市の脱炭素化に向けた先行的な取組と今後の展開について」(宮崎県延岡市)

宮崎県延岡市は、旭化成の創業地でもあり、
製造業が集積した東九州の中核都市となっています。

この延岡市では、環境省から「脱炭素先行地域」に指定されており、

「高度成長期を支えた住宅地のカーボンニュートラルによる再生と強靭化モデル
~ニュータウン脱炭素再生戦略」

をかかげ、延岡市の一ヶ岡エリア、およそ2,770世帯を対象として、

太陽光・蓄電池、ZEH建替、ZEB子育て支援施設を導入、
デジタル地域通貨「のべおかCOIN」等を活用して、
ニュータウンのリニューアルと脱炭素化を組み合わせ、災害に強い街に再生する計画。

環バスや乗合タクシーのEV化等による「公共交通網の再構築」等をめざしています。

延岡市は令和4年11月にこの「脱炭素先行地域」に選定され、
約1年半が経過し、その取り組みが少しずつ始まっているとのことでした。

ちなみに宮城県においては、
仙台市と東松島市が指定されており、
2050年カーボンニュートラルに向けて全国でこのような取組が行われています。

「脱炭素先行地域」(環境省)
https://policies.env.go.jp/policy/roadmap/preceding-region/

●「町役場庁舎の建て替えに係る『ZEB』認証取得について」(熊本県玉東町)

続いて、高千穂町から熊本を越えて、
熊本県玉東町を訪問しました。

ここでは全国で初めて、
『ZEB』認証を取得した町役場を新たに建設した
とのことで、

財政規模は一般会計約50億、人口は約5千人の町役場が、
全国初の『ZEB』町役場をつくったとのことでその詳細を伺いました。

ちなみに、『ZEB』とは?

「Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の略称で、
「ゼブ」と呼びます。

快適な室内環境を実現しながら、
建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のことで、
近年様々な公共建築物で、「ZEB」が進められていますが、

その収支から、
75%以上を「Nearly ZEB」、
50%以上を「ZEB Ready」、
40or30%以上を「ZEB Oriented」とランク付けしています。

100%以上が『ZEB』ということで、
この玉東町役場は最高ランクの位置づけであり、
町役場としては日本初とのことです。

屋上全面に国産太陽光パネルを設置し、
太陽光パネルが日よけとなり温度上昇を抑制、
また省エネ効果の高い空調設備と換気設備の導入、
東西の窓を減らして日射熱取得率を下げる設計、
外部に面した窓にエコガラスを使用、
吹き抜けを設けないなど、そのほかにも様々な小さな工夫がたくさんなされていました。

町役場建設の財源も、
国からの補助金や起債、基金などを合わせて、
約16億円で完成とのことで、

物価高騰の折、建設業者の皆さんが少し心配になりますが、
財源の使い方も見事な印象を持ちました。

この玉東町は近くに西南戦争の史跡がたくさんあり、
有名な「田原坂」も近くにあるということですし、

生産量が日本一であるスモモ「ハニーローザ」の産地ということで、
いつの日かゆっくりと来てみたいと思いました。

この新役場庁舎の前にある旧庁舎がちょうど解体作業中でしたが、
旧庁舎は昭和25年に中学校として建設された木造平屋建てで、

昭和41年から町役場庁舎として利用しており、
耐震性不足はもちろんのこと、築74年ということで、
町民から庁舎建て替え反対の意見はなかったとのことでした。

この新庁舎が町の活性化につながっていくとよいですね。

熊本県玉東町ホームページ
https://www.town.gyokuto.kumamoto.jp/

●宮城県議会環境福祉委員会県外調査三日目。
「『福岡県WORK!DIVERSITY事業』をはじめとする障がい者等への就労支援の取組について」(福岡県福岡市 福岡県就労支援協同組合)

「福岡県WORK!DIVERSITY事業」は、
障害者就労支援事業所の横断的な活用による効果を検証するため、
日本財団が2023年現在4つの地域(岐阜市、千葉県、福岡県、豊田市)でモデル事業を行っており、その一つとして進められています。

「WORK! DIVERSITY プロジェクト モデル事業」(日本財団)
⇒ https://work-diversity.com/model_now

障害者を支援する事業所はいま全国に約15,000箇所あり、
様々な政策支援が進められています。

しかし一方で、障害者として認められた手帳を持っている方以外にも、

ニート、ひきこもり、ネットカフェ難民、ホームレス、
非就労障害者、難病患者、がん患者、HIV陽性者、
AIDS患者、若年性認知症、薬物経験者、アルコール依存症、
LGBT刑余者、貧困母子世帯、高齢者など、

「働きづらさ」を抱えた方々への政策支援は手薄である状況です。

しかし一方でわが国では労働力不足が叫ばれ、
2030年には労働力不足が644万人に達する見込みであり、
政策体系を見てみると、外国人材の活用が急務となっている状況です。

はたしてそれだけでよいのか?

わが国において、「働きづらさ」によって就労困難となっている人々に、
働くこと、働き続けることを実現し喜びを感じてもらえる支援が必要なのではないかということで、

「福岡県就労支援協同組合」
⇒ https://fesc.jp/

を訪問、中村信二理事長からその思いやこれまでの長年取り組んでこられた教育事業も含めた経緯、
そして現状の取組についても教えていただきました。

中村理事長は福岡市天神において、無料学習室「学術の森」を展開、
不登校の子供たちの学習指導も行っているそうです。

お話を伺いながら、
働きづらさを支援する取り組みも含めて「教育」であるとのお考えに、
強い思いを感じたところです。

宮城県においても同様の取組がまもなく始まるということであり、
こうした「働きづらさ」を抱えた方々への支援は、
もっと進めていかなければならない分野であると感じました。

●「春日市における子育て支援や子育て環境の充実に係る取組について」(福岡県春日市)

福岡県春日市においては、子育て支援を熱心に行われているとのことで、
その取り組みを伺ってきました。

実際に子育て政策がよいから、
春日市への引っ越しを決めたという若い家庭が少なくないそうで、
実績が出ているとも言えますね。

春日市では、令和6年4月から「春日市こども家庭センター」の運用を開始し、
こども家庭支援員、統括支援員、
子育て支援コーディネーター、母子保健コーディネーターが
積極的に相談に乗っているそうで、

母子手帳アプリ「春っこ」を導入して妊娠から出産、子育てまで、
アプリを使って情報提供したり、アンケートやオンライン相談予約なども実施しています。

今後は妊娠から3歳児健康診査までをすべてDX化していくとのことです。

この母子手帳アプリは、全国で600以上の自治体が導入していますが、
子育て支援事業のDX化はまだまだ少ないようです。

必要なタイミングでプッシュ型で情報提供されるとともに、
アプリから入力申請は好きな時間にできるため、
来庁当日の待ち時間が減るという効果も生まれるようですし、
行政の効率化にも貢献しているとのことです。

各種のパパママ教室の予約や給付金の申請、
そしてビデオ通話によるオンライン相談もできるということで、
こうした仕組みの導入で少しでも子育てしやすい環境をつくることができればよいですね。

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今回は、九州3県の先進的な取組を伺いましたが、
日程もなかなかの強行軍で、密度の濃い内容でした。

それぞれの地域で積極的に取組を進める自治体が様々あることを感じると同時に、
地方議員や行政のなかに熱意を持って取り組んでいる人がいる地域は、
国に先駆けて課題を見つけ出し、手法を考案し、
実践をしているところがあるなと感じた次第です。

宮城県ではどうだろうか?

宮城県においても、地方議員も行政もすばらしい方々がたくさんいますので、
さらに一緒になってみんなで取り組んでいきたいですね。

お忙しいところ、視察を受け入れていただきました皆様に感謝申し上げますとともに、
今回伺った調査内容を、今後の宮城県における政策立案に役立ててまいりたいと思います。

ありがとうございました。

(第5051号 令和6年7月13日(土))