【渡辺勝幸ご報告】東北大学大学院における令和5年度講義が終了しました─「情報技術経営論」講義の内容と受講者の感想を公開します!その1【起業家教育】
今年も令和5年4月から8月にかけて、
毎週月曜日に、
私、渡辺勝幸は、
東北大学大学院情報科学研究科
(https://www.is.tohoku.ac.jp/)
において、非常勤講師として、情報技術経営論の講義をしました。
今年でこの講座を持つのは早いもので10年目となりました。
この講義を受け社会に巣立って行った方々もたくさんいますし、
Facebookなどで引き続きつながってくださっている卒業生の方もおり、その活躍が楽しみです。
なかには起業した方もいらっしゃいますし、
最近は学生起業家の受講も増えているのは時代ですね。。。
今年の履修者は12名。
数年ぶりのすべて対面講義ということもあり、
履修者数は昨年までに比べて激減しましたが、
少数精鋭の優秀な大学院生が受講してくださり、
つくりあげられた事業計画はどれもなかなか素晴らしいものでした。
私がこの4か月間講義した内容と、
大学院生の受講しての感想を以下の項目で書いていただきましたので、
「起業家教育」をテーマに格闘している私の活動を、
みなさんにシェアしたいと思います。
1、この情報技術経営論を受講しての全体の感想
2、最も印象に残っている講義(第○講と記してください)とその理由
3、この講義を受けて、自分がこれからの人生をいかに生きていくか実践の「置換え」を表明してください。
この講義は、履修者全員に
メールアドレスを登録してもらい、
メーリングリストを作成しました(GoogleGroups)。
このメーリングリストを使って、
講義の週の土曜日までに、
1、講義において気づいたこと【気づき】
2、その気づいたことから自分は何を実践するか【置換え】
等を毎週提出していただきました。
東北大学令和5年度シラバス
【情報技術経営論 Management of Information Technology】
前期(月) 10:30-12:00
科目名/Subject 情報技術経営論
曜日・講時・教室/Day/Period/Place 前期 月曜日 2講時
単位数/Credit(s) 2
対象学科・専攻/Departments 情報基礎科学専攻、システム情報科学専攻、人間社会情報科学専攻、応用情報科学専攻
授業題目/ClassSubject 企業のエッセンスを学ぶ
授業の目的・概要及び達成方法等
起業家学。会社の作り方、ゼロから事業はいかにしてつくられるか、
起業成功のエッセンスを学ぶことにより、ビジネスで成功する極意を習得し、
受講者が修士修了後、社会に出たときに即戦力として活躍できることを目的とする。
初回の講義はリモート講義とする。
授業の目的・概要及び達成方法等(E)
Entrepreneurial Studies.
Students will learn how to build a company and the essence of successful entrepreneurship.
The objective is to prepare students for immediate success.
The first lecture will be a remote lecture.
学修の到達目標/Goal of Study
情報科学を基礎として起業することに理解を深める。
授業内容・方法と進度予定/Contents and progress schedule of the class
下記の内容を講義する。
・起業に必要なものは何か─逆境こそチャンス
・起業戦略と新規事業立案戦略─6W2H
・起業支援政策の形成過程─安倍政権の成長戦略とは
・ビジネスは問題から生まれる─問題把握、現状分析と客観視
・会社の作り方
・実際に事業を「つくる」
・どの会社にも必ず起業家がいる─起業家の歴史
・起業がうまくいくチームは「桃太郎」
・集客、営業の基本─ドラッカーの「顧客の声を聞く」
・値決めは経営─価格はどのようにして決められるのか
・起業とファイナンス
・公益経済と共通価値の実現(ポーターの経営論)
・プレゼンを学ぶ
・起業家ヒアリング(起業支援、家事代行ビジネス、海外進出支援ビジネス、社会起業、パーソナルトレーニング、食とワインと地域貢献、介護事業の未来など)
使用言語 日本語
成績評価方法/Evaluation Method レポートで評価する。
授業時間外学修
履修者には授業に即した課題を行うことが求められる。
授業時間外学修(E)
Students must do the assignments as they are given.
オフィスアワー 授業開始日に説明する。
オフィスアワー(E)
Office hours will be announced on the first day of class.
実務・実践的授業/Practical business
※○は、実務・実践的授業であることを示す。/Note:”○”Indicates the practical business
○
その他/In addition
オンラインでの質問を積極的にお待ちします。
令和5年度の講義カリキュラムは以下の通りで行いました。
第1講 4月10日 オリエンテーション・起業には何が必要か
第2講 4月17日 起業家ゲストスピーカーその1「私が0→1ビジネスに挑む理由」 株式会社 IDENTITY 野地数正 代表取締役
第3講 4月24日 起業戦略と新規事業立案戦略ー6W2H
第4講 5月1日 起業支援政策の形成過程ー政府の成長戦略とは
第5講 5月8日 ビジネスは問題から生まれるー問題把握、現状分析と客観視
第6講 5月15日 起業家ゲストスピーカーその2「日本と世界を繋ぐビジネスクリエーター 中小企業の国際化支援事業」 株式会社KM International 中正宏代表取締役
第7講 5月22日 どの会社にも必ず起業家がいるー起業家の歴史
第8講 5月29日 起業家ゲストスピーカーその3「クラウドファンディングによる起業と新しい出版のかたち」 株式会社サンガ新社佐藤由樹代表取締役
第9講 6月5日 起業家ゲストスピーカーその4「アクアイグニス仙台設立物語 ~復興から次のステージへ~」 仙台reborn株式会社深松努代表取締役
第10講 6月12日 事業計画を『つくる』(ワークショップ)
第11講 6月19日 公益経済と共通価値の実現(ポーターの経営論)
第12講 6月26日 値決めは経営・ビジネスの基礎、人事管理ー起業がうまくいくチームは『桃太郎』
第13講 7月3日 起業家ゲストスピーカーその5「越境する福祉」 社会福祉法人ライフの学校田中伸弥理事長
第14講 7月10日 事業計画を『つくる』(ワークショップ)
第15講 7月24日 プレゼンを学ぶ・ファイナンスについて(お金の借り時はお金を返せるとき)
第16講 7月31日 【最終講】事業計画発表
以下、学生のみなさんの感想です。
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【Aさんの講義の感想】
1、この情報技術経営論を受講しての全体の感想
私にとって本講義は,5年間経営について学んでいる講座以外で,他の環境で経営について学びたい,という思いから受講した.
結果としては何か新しいことを学べたわけではなかった.
しかし,情報科学研究科として,もしくは修士学生としてのビジネスに関するレベル感に触れることができたのは大きな経験であった.
講座以外で経営について話す友人は私にはいなかったが,他のフィールドでも経営についてしっかり向き合い,その考えができる学生もいて,社会に出る上で身につけておくべき知識や態度,コミュニケーション能力を感じ取ることのできる,情報科学研究科の開講する講義の中では他では経験できない交流ができたように感じる.
2、最も印象に残っている講義(第○講と記してください)とその理由
【第6講】
第6講の,食の海外輸出の事業行っているゲストスピーカーの回.
自分の中にある信念の強さを感じ取ることができ,「我々起業家は,(企業は考えていなかったものの,)芯は必ずもっている」「起業は,ある意味必然だったのかもしれない」という言葉が強く心に残っている.
また,私はフレームワークを神格化・絶対視する考えが好きではないが,このゲストスピーカーはフレームワークを「作る」こととその意義について語っており, 考えとしても興味深く聞くことができた.
3、この講義を受けて、自分がこれからの人生をいかに生きていくか実践の「置換え」を表明してください。
長い期間,経営・ビジネスについて学んできた自負があるが,私にとってこれらはあくまで趣味・興味の対象であり,将来の糧にして行く気はさらさらない.
起業についても積極的にしたいという気があるわけではなく,もし自身に何かやりたいことができ,その最善の手段が起業であったらする,くらいのつもりであった.
どちらかというと私は大手企業の経営層の話をよく聞くことがあり,その上でも「教養として」経営を学ぶ意義があると感じていたが,
この講義では起業家の話を多く聞き,新たな視点からのお話に触れることができた.
その結果,何か自分の中で「置き換え」られたわけではないが,しかし「もし自身に何かやりたいことができ,その最善の手段が起業であったらする」という気持ちが強くなったように感じる.
それは起行自体の難しさ故という点もあるが,しかしそれ以上に起業家は「自分がやりたいこと」がベースである以上,熱意を持って,面白く物事を語っているように感じた.
本当にやりたいことであり,起業が最善の手であったら,積極的にその手段を取りたいと考えるようにはなった.
【Bさんの講義の感想】
1、この情報技術経営論を受講しての全体の感想
今まで受講してきたどの講義とも違い、とても新鮮な講義であった。
今まで理系学生として物理や数学、情報などを受講してきたが、こうしや企業の経営や企業に関する講義を受講したのは初めての経験であった。
社会に出る上で基本となるような基礎知識から、起業をする上での心構えなど様々なことを知ることができ、とても勉強になった。
現在就活中の身として、身近に感じることができる内容も多く、すぐに実践しながら実感を持って知識を身につけることができた。
2、最も印象に残っている講義(第○講と記してください)とその理由
【第9講】
自分たち東北大生にとって身近な、名取にあるアクアイグニスについてお話を聞くことができたことがとても印象深く残っている。
そこにある人々の想いや背景などを知ることができ、より一層身近なものに感じることができた。
3、この講義を受けて、自分がこれからの人生をいかに生きていくか実践の「置換え」を表明してください
この講義では、事業を作る上での心構えなど、様々なことを学ぶことができた。
その心構えを応用し、こらからの社会人人生で活かしていきたいと考えている。
例えば、事業やチームを作る上での過程のお話。
チームとは段階を踏んで出来上がっていくものであると理解していることは、企業に所属する中でも、あるいは家族に所属する中でも活かすことができる。
また、目標を言葉にする行動などもそうであり、事業を作る上で必要なことは人生を作る上でも大切なことばかりであると感じた。
そういう風に、この講義で得ることができた知識を社会の中ではもちろん、人生全般の中で活かしていけるようにしたい。せっかく受けることができた貴重な機会、無駄にしないようにしたい。
【Cさんの講義の感想】
1、この情報技術経営論を受講しての全体の感想
自分は今までのバックグラウンド、そして今現在所属しているポストからしても、「経営」という単語からは程遠い存在であったと思う。
工学系の研究者としての道を進んでいると、ある意味経営という観点をまったく考慮せずに投資を行うことが正しいという考えが当然のように存在する環境にいることになる。
当講義にはそんな現状の自分にとって大きく不足していた考えやモノの見方を多く提供していただいたと思う。
2、最も印象に残っている講義(第○講と記してください)とその理由
【第13講】
ゲストスピーカーによる「社会福祉法人ライフの学校」に関するご講演。
個人主義と一世帯当たりの人数が少ない昨今の集団の在り方に対して、漠然と問題意識のようなものを感じていたが、当講義でその理由に対する明確な見解を紹介していただき非常に腑に落ちたことを覚えている。
多様性のない集団で過ごすことによって、自分とは身体的、精神的特徴の異なる人に対する理解や接する技能が失われていく問題を解決するという起業モチベーションに強く共感した。
3、この講義を受けて、自分がこれからの人生をいかに生きていくか実践の「置換え」を表明してください
本講義全体を通して、起業と学術研究は二つの異なる概念ではなく、グラデーションのようにシームレスに繋がっている概念であると感じた。
自分の考える理想や新しいアイデアなどが今ある技術や予算内でどれだけの実現可能性を持っているかの違いがあるのみで、その可能性がまだ低い場合は研究、高くなっていくと起業へのモチベーションが高まっていくものだと考える。
自身の研究は今どれほどの実現可能性を持っているのか、そしていずれ起業をすることまで考えたとき、事業化する上で不足しているものは何かを今から真剣に考える必要がある。
【Dさんの講義の感想】
1、この情報技術経営論を受講しての全体の感想
事業計画は非常に良い経験でした。
チームで1つの課題に取り組むときは、目標や想いを共有することが大切であることを身にしみて感じました。
それらを共有できた後は、議論が濃密になりましたし、なによりとても楽しかったです。
4人の成果物は、1人で4倍の時間をかけるよりも遥かによいものになったと思います。
メンバーのみなさん、本当にありがとうございました!
2、最も印象に残っている講義(第○講と記してください)とその理由
【第9講】
言葉を選ばずに言えば「本物だな」と感じました。
視野・行動力・リーダーシップ・熱量、どれもレベルが違うと感じました。
深松さんのお話を聴けただけで、本講義を受けた価値があったと思います。
いつか一緒に仕事がしたいです。
3、この講義を受けて、自分がこれからの人生をいかに生きていくか実践の「置換え」を表明してください
「何をなしたいのか」を自分に問い続けたいと思います。
それを見つけて、その達成のために邁進する人生にしたいと思います。
【Eさんの講義の感想】
1、この情報技術経営論を受講しての全体の感想
私は,起業はとてもハードルの高いものだと感じていたが,ゲストスピーカーの人の中には,会社をリストラされたため起業した人や,会社がつぶれたため起業した人などがおり,足りない知識や経験はあとで身に着けていっても良いのだと気づいた.
起業するには,とりあえず一歩踏み出して行動してみることが大事であるのだと学んだ.
2、最も印象に残っている講義(第○講と記してください)とその理由
【第9講】
第9講が最も印象に残った.
この講義では,儲けようとして事業を行うのではなく,誰かの役に立とうとして事業を行うことが重要であり,誰かの役に立っているなら,結果として儲けることができるのだと学んだ.
3、この講義を受けて、自分がこれからの人生をいかに生きていくか実践の「置換え」を表明してください
起業だけでなく,何事でも行動を起こすことが重要であると学んだ.
私は,海外留学をしてみたいと考えているが,もっと英語の能力が向上してから行こうと先延ばしにしてきた.
これからは,挑戦したいことがあったら,とりあえず行動を起こしてみようと思う.
【Fさんの講義の感想】
1、この情報技術経営論を受講しての全体の感想
私はこの講義を受けて、経営について能動的に考えたり調べたりする姿勢を培う機会を得ることができた。
起業をする際に必要な戦略や考え方を学び、ゲストスピーカーによる経験談を聞くことで起業することのリアルを知ることができ、実際にチームで事業計画をすることでその難しさとやりがいを感じることができた。
友人に誘われて何となく受講した講義だったが、講義全体に多くの学びがあり、自身の知見を広げることができた意義のある講義であった。
2、最も印象に残っている講義(第○講と記してください)とその理由
【第3講】
私は、第3講の企業戦略と新規事業立案戦略が印象に残っている。
この講義では起業計画にはその実現性や「6W2H」のような立案に必要なフレームワークを考慮すること、また経営者の情熱や信念を強く持つことが大切であることを学んだ。
様々なゲストスピーカーの講演を聴く中で、彼らがどのような志をもって起業し、彼らの思いをどのようにして事業として形にしているのかを、この講義で得た知識を生かすことで、より本質的に理解することができた。
3、この講義を受けて、自分がこれからの人生をいかに生きていくか実践の「置換え」を表明してください
講義を受けて、多くの起業家は強い信念のもとに事業を行っていることを知った。
今の自分には何がしたいのかといった意志が定まっていないため、自分がどうしたいのか、どうありたいのかというような自身の軸をはっきりと持つようにしようと思った。
そして、講義で学んだことから様々な企業が何を成し遂げようとしていて、それにはどのような背景があるのかなどを理解して、自身の軸と照らし合わすことで自分に合った就職選択ができるようにしようと思う。
また、やりたいことが明確に見つかり、起業するような機会に会ったときは、本講義で学んだ起業のノウハウを十分に活用してビジョン実現を成し遂げたい。
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コロナ禍になって以来、
数年ぶりの全面対面講義ということで、
ゲストスピーカーの皆さんの熱量も肌で感じていただけたと思いますし、
学生同士のやり取りも、数年ぶりにリアルで顔を合わせて議論してもらいました。
しかし同時に、Slackなどのアプリや、Google classroomを利用することにより、
オンラインも活用しながら、生きた講義になってきていると感じています。
今年も熱心に多くの学生さんが取り組んでくれました。
学生のみなさんの感想は、次回以降に続けます。
(第4719号 令和5年8月16日(水)発行)