中学校PTA会長の卒業式祝辞-令和2年度仙台市立沖野中学校卒業式祝辞
令和3年3月6日、
「令和2年度仙台市立沖野中学校第36回卒業式」にお招きいただいておりました。
しかし今年も昨年に引き続き、
新型コロナウイルス感染症の影響により卒業式は縮小開催となり、
本来PTA会長として祝辞を述べるところですが、
残念ながら出席することはできませんでした。
残念なことですし、ともに卒業をお祝いしたかったのですが、
お祝いの気持ちだけお伝えをしたいと思います。
PTA会長の卒業式祝辞は
卒業生のみなさんには印刷して配布されるとのことで、
卒業をお祝いする気持ちが少しでも、
文字として共有されていればうれしく思います。
この春全国各地でご卒業される皆様、
そして保護者の皆様に心よりお祝いを申し上げます。
ご卒業、おめでとうございます!
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祝 辞
冷たい風が吹く今年の冬もようやく終わりを告げ、
日ごとに春の暖かさが感じられるようになりました。
沖野中学校三年生のみなさん、ご卒業、誠におめでとうございます。
また、保護者の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。
そして、校長先生をはじめとする教職員の皆様、保護者の皆様には、
三年間本校のPTA活動にご協力をいただきましたことに、
この場をお借りして心より御礼を申し上げます。
入学式の時には、みなさんまだ子供の雰囲気で、
学生服のサイズもちょっと大きめだったように感じましたが、
三年間ですっかり大人になったその姿に、親としては頼もしく感じるとともに、
ちょっぴりさみしさも感じるところではないでしょうか。
昨年から全世界で猛威を振るった新型コロナウイルス感染症は、
卒業生の皆さんの中学校生活に大きな影響を与えました。
中学三年生としての学年開始は六月になり、
その後の学校行事も例年とは異なる対応となってしまったことはとても残念なことでした。
世の中もコロナ禍においてたいへん厳しい状況になっているところですが、
どんなに厳しい状況になっても、そこから努力し工夫し、
困難を乗り越えていく人がたくさんいます。
沖野中学校で学んだことをもとに、
いかなる困難も自ら拓いていくことにより乗り越え、
たくましく生きていってほしいと思います。
さて、みなさんは国語の時間に、
中国思想の大家である孔子について学んだことがあると思います。
孔子は、「吾十有五にして学に志す」と語りました。
これは、孔子が人生を振り返って述べた言葉で、
十五歳のときに立志、目標をもって生きることが大事であるということを語ったものです。
古来、その十五歳にわが国では「元服」という成人式を行いました。
この元服から髪型を変え、名前を改めたりすることもあったとのことで、
この日から大人の仲間入りを果たす、一人の成人として、
大人の自覚と責任感が求められることになったわけです。
また、幕末維新の時代に、橋本左内という人物がいました。
今年のNHK大河ドラマ「渋沢栄一」や、坂本龍馬や西郷隆盛と同世代で、
大変優秀な人物であったそうです。
福井県出身の左内は十六歳で大坂に出てオランダ語や西洋医学を学び、
やがて福井藩主を支え、江戸末期、諸藩の中心人物となりました。
しかしこの橋本左内は二十六歳でこの世から去り、
明治維新の中核となることはできなかったのでした。
この橋本左内が、十五歳のときに、
自分を戒めるために記した『啓発録』という文章があります。
まさにみなさんと同じ年のころに人生について真剣に考えていた、
そんな文章ですので、ご紹介したいと思います。
『啓発録』は五か条からなります。
一、稚心を去る
稚心とは幼い心のことで、いわゆる子供じみた様子のことです。
この稚心が害となる理由は、稚心を除かないと士気が振るわず、
いつまでも腰抜けのまま終わってしまうためです。
二、気を振ふ
「気を振るう」とは、元気や勇気を出せということです。
人に負けたくない、遅れまいとする積極的な心、
もし屈辱的で恥ずかしいことがあれば残念でならないと思うこと。
負けん気が人の成長には重要であるということです。
三、志を立つ
志のない者は、魂の抜けた虫と同じだ。
いつまでたっても成長することがない。
だが志を一度立ててしまえば、
それからは日夜成長していくようになると左内は書いています。
四、学に勉む
同じように勉強しても、志があるのとないのとではちがいます。
目的を持って努力すると意欲が高まり、成長も早くなります。
左内は、学問に一所懸命励むのは、
読書して自分の知識を広め、心胆を練り上げることにあり、
それが重要だといっています。
五、交友を択ぶ
左内はまた、よい友達を択べ、と言いました。
目標を持ち、学に勉める友達がいれば、
共に成長しあっていけるものです。
以上が、橋本左内の『啓発録』の内容です。
まず稚心を去ることで大人の自覚を持ち、
氣力を高めて、努力を志に集中させる。
そして、勉強して志に水を与え、
友人と切磋琢磨し合うことで共に成長していく。
皆さんと同じ十五歳の橋本左内が伝えたかったことを、
これからの人生、ぜひ中学校を卒業してからも心に留めておいてほしいと思います。
みなさんには無限の可能性があります。
なんとなくこういうことがしたい、ああいうことをやってみたいなあ、
そんな夢や希望を持つことです。
すべては志から始まります。
そして、校長先生をはじめ、三年間皆さんがお世話になった先生方は、
すべて、「先生になって子供たちのために力を尽くそう」という「志」を持ち、
たくさんの勉強をして努力し、その夢を実現した方々です。
その先生方は、みなさんのためにこの三年間、夜遅くまで、
ときに休みの日も働いていらっしゃいました。
ぜひ皆さん、今日は三年間の感謝の気持ちを先生方にお伝えしてください。
来週の三月十一日で、
あの東日本大震災から十年という節目がやってきます。
残念なことに、これからも災害は突然やってくることでしょう。
昨日まで当たり前と思えたことが一瞬で消えることもある、
そう思えば、みなさんが今日この日、
元気に卒業式を迎えられることはとてもありがたいことです。
これからぜひとも大きな夢や目標、そして志をもって、
感謝の気持ちを忘れずに、すてきな大人になってほしいと思います。
本日、ここに、仙台市立沖野中学校を卒業するみなさんが、
今後大いに活躍することを心よりお祈り申し上げまして、
これを卒業の祝辞といたします。
令和三年三月六日
仙台市立沖野中学校 父母教師会 会長 渡邊 勝幸
(第3826号 令和3年3月6日(土)発行)